中央山脈の東側斜面に位置する金峰郷は、原始の自然と豊かな部落文化が色濃く残る地域です。パイワン族やルカイ族の人々は、百歩蛇を守護霊として崇め、「百歩蛇の郷」とも呼ばれています。毎年11月にはローゼルの花が咲き誇り、季節のマーケットや伝統文化イベントが行われます。訪れた人々は、ローゼルの加工品やお茶を味わいながら、現地の暮らしを体験できます。代々受け継がれてきた原住民族の工芸や陶芸も盛んで、金峰郷は自然と伝統が共に息づく山の集落です。

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金峰 Ig@bkklkkya

 (写真提供: @bkklkkya)

谷あいに流れる部落の記憶

金峰の人々の物語は、嘉蘭歴坵賓茂新興正興といった各部落の遷徙の記憶と深く結びついています。かつて一部の住民は比魯近黄介達など、より山奥の地域に暮らしていましたが、時代の変化や生活環境の変動に伴い、現在の居住地へと移り住んできました。この山地から現在地への移動は、単なる居住空間の変化にとどまらず、パイワン族を中心にルカイ族やその他の人々が関わる生活のつながりが、時代ごとに新たな部落の秩序と日常のリズムを築いてきた過程を示しています。

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(写真提供:台東県政府)

大武山の東麓に広がる金峰には、山林とともにある記憶が今も残されています。近黄比魯、そして金峰周辺に点在する野渓温泉は、人々にとって親しまれてきた自然の風景であり、谷や水の流れと共に生きる暮らしを映し出しています。歴坵周辺にある茄苳の巨木や大白榕の群生は、今も守り手のように立ち続け、部落と自然が長く寄り添ってきた歴史を静かに伝えています。金峰において人文は、祭りや工芸だけに存在するものではありません。移住の歴史や地名、そして世代を超えて土地と共に生きる営みの中に息づいています。

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(Photo credit: Taitung County Government)