Taitung Slow Food Festival

スローフードフェスティバルは台東にとってただの恒例行事ではなく、人々のライフスタイルを体現したイベントであると言えるでしょう。

サステナブルな生活を実現する為に行っている環境、社会、経済に対する持続可能性を追求した取り組みは台東がこれらの事項について管理できていると認められたことからISO20121国際認証を取得しており、これはスローフードフェスティバルの開催にあたって重要なマイルストーンとなっています。(Photo credit IG@fox_eatwithdog)

Taitung Slow Food

台東のスローエコノミーとスローライフ

台東のスローエコノミー戦略は小規模農家に対して持続可能な有機農法の導入を推奨し、化学肥料と農薬への依存度を減らすことに成功、結果的に自然環境保護に成功しただけではなく食品の安全性を高め消費者からの信頼をも勝ち得ました。この成果を成し遂げるに当たり台東スローフードフェスティバルの存在は必要不可欠だったと言えるでしょう。

広大な土地面積を有する台東ですが、有機農法に従事する農家は方々に点在しており彼らは常に販売方法やブランド力の形成といった様々な困難に直面していました。高価で限られた販路しかなく、低温貯蔵施設がなくては保存が難しい農産品は収益になりにくく、農家の生産意欲に多大な影響をおよぼします。台東スローフードフェスティバルは地産地消を意識した「慢農(スロー農業)」と、厳選した食材を用いて料理をする「慢廚(スロー料理)」、そしてこの二つのコンセプトに賛同した消費者「慢食客(スロー客)」が集まるコミュニティをこの地域に根付かせたことにより、畑から食卓へというサステナブルなライフスタイルの構築を可能としたのです。

「幸せのスローエコノミー」は収益を増加させるのみならず地元住民が生活のクオリティについて関心を持つきっかけにもなっていて、現在の台東は国内で最も暮らしやすい都市の第二位にまで上り詰めるなど、スローエコノミーの力がより良い方へと発揮されています。

Taitung Slow Food Fruit

サステナブルな有機農業に取り組む

台東にとってサステナブルな有機農業は机上の空論などではなく生産性とエコロジーをバランス良く両立させることのできる新しい価値観をもった取り組みです。近年スローエコノミーが提唱する理念に賛同する小規模農家が増加した事によって化学肥料と農薬に依存した従来の農業スタイルはその数を減らし、自然農法を取り入れる人々が増えています。自然農法は土地自体を元気にさせるだけではなくそこで暮らす生物達の特性を生かしながら共生できる為、農家の人々の土地に対する愛情とそこに住まう生態への責任感に大きな変化が見られました。2017年には867ヘクタールだった有機農家の耕作面積は2023年には1320ヘクタールにまで増加しておりこれは雲林、彰化の二大農業県を凌ぐ大きさで、特に有機栽培米の稲作面積は全国二位の大きさを誇っています。

台東の有機農業地は農産品の生産以外にも、命の大切さを教えてくれる自然教室として利用されています。地元農家は農場を教育の場として、多くの学生の来訪を受け入れることで彼らにサステナブルの意味を深く理解してもらため、実際に体験させております。このような食農教育活動は次世代へサステナブル農業の重要性を広める為だけに止まらず、素材本来の味わいや食に関する知識を幼少期より学ぶ事で大人になってから正しい知識を持って食物のチョイスができるスローフードの精神を引き継いだ人になって欲しいという願いを受けて取り組まれています。2021年、台東県政府農業処は小中学生に対して開講した有機栽培米の食育課程50回のうち、48回において有機米を使った昼食を提供し食材の育て方や成長課程について学んでもらった他、健康的な飲食習慣や環境に配慮した生活を行う重要性についての解説を行いました。

サステナブルな社会運動をリードする

台東スローフードフェスティバルは参加者に一度きりの体験を与えるイベントではなく「スロー」をテーマにエコロジー改革やサステナブルライフを推進する社会運動の一つとして取り組まれています。期間中には様々なワークショップや講座、イベント活動が開催されていて、それらは飲食に対する概念が変わる重要なサステナブルイベントとして認識されています。参加者はイベントを通して自分が選んだ食物が環境に与える影響を理解し、今後どのような食物をチョイスすることがサステナブルライフに繋がるのかを学べます。

台東スローフードフェスティバルは中央山脈を越えたその先にまで広がりを見せており2021年には台北の華山1914文創園区にて初の県外イベントが開催され大きな反響を呼び、2023年に再度同イベントが執り行われました。イベントでは台東の有機農産物の紹介や畑から食卓までをコンセプトとしたスローフードに関する講座が開設され、台東の生活哲学が目まぐるしいスピードで生活している都会の人々のストレスを軽減させるのに有効だという事がわかりました。

イベントに関して大きな反響が得られたことから台東スローフードフェスティバルは今後、多くの都市での開催が見込まれています。時間をかけて台東を訪れずとも身近な場所で台東の生活リズムやスローエコノミーが体験でき、イベントを通してサステナブルな食生活を体感し、農業の価値と環境への配慮を身につけた参加者たちが台湾社会におけるエコノミーとエコロジーの両方において好循環を引き起こすきっかけとなってくれることを願っています。

自然との共存と調和を体現している台東スローフードフェスティバルは限りある資源と生活リズムを大切にしながら地方文化と伝統を守り、サステナビリティ思想が世界的な広がりを見せる中、地方都市の再発展に取り組んでいます。これらの事から分かる通りスローフードフェスティバルはただの恒例行事などではなく、文化の推進者であると共に台湾全土の生態系に大きな改革をもたらし、世界に向けて創造力に支えられた台湾のサステナビリティ力を発信し続けてゆきます。