(写真提供:九鳥陶燒在台東 )
台東は美しく雄大な自然景観に恵まれているだけではなく、多くのオーストロネシア文化遺産を有している。陶芸はこの地にとって原住民文化発展の歴史を見守り、過去と現在までを繋ぐと共にその文化を表現する為の重要性をもっています。台東陶芸の伝統は遥か古来まで遡ります。考古学的発見によるとこの地で暮らしていた原住民は新石器時代には既に陶器を使い始めていたことが判明しており、これらの陶器は生活必需品でありながら多くの文化的な意義も持っていました。
(写真提供:Taitung County Government)
例えばアミ族の伝統陶器である水瓶や調理器具の形状や装飾からは部族に伝わる宇宙観や暮らしの知恵が反映されていますし、精巧な作りで名を馳せるパイワン族の陶器壺はお酒や水を注ぐ為だけではなく、婚儀や祭儀といった重要な儀式で使用される祭具としての役割も持っています。時代の移り変わりと共に多くの若者が部落を離れ、伝統陶器は継承の危機に瀕していますが、近年文化的意義が再注目されている事からこの貴重な文化遺産を継承したいと多くの芸術家達が動き出しています。
(写真提供:Taitung County Government)
台東には、独自の方法により伝統を継承し、新たなオーストロネシア陶芸文化を作り出している二名の傑出した陶芸家がいます。それが哈匿·扎丮と廖光亮である。加路蘭部落に哈匿藝術工作室を構える哈匿·扎丮はアミ族出身の陶芸家です。哈匿先生が歩んだ陶芸への道は決して平坦なものではなく、彼は30代の頃事故により視覚障害を負い、それが彼を陶芸の道へと進ませるきっかけになりました。終わることのない研鑽を重ねることで多くの陶芸技法を身につけた彼はアミ族伝来の伝統陶器の復興に力を入れて取り組んでおり、哈匿先生の作り出す作品には伝統的でありながらもそこに現代的な要素が融合されているのを感じられます。彼は史前博物館の所蔵品を研究することでアミ族の伝統陶器の製作方法を復活させ、そこに流木の模様を取り入れる現代的な表現技法を用いた創作活動を行っています。哈匿先生の作品からは卓越した精巧な技術力と土地や文化に対する深い想いが伝わってきます。
哈匿先生は陶芸教室の運営にも力を入れて取り組んでいて、部落の若者達に陶芸を教える為のワークショップを開講することで部落に伝わる伝統美学の探究を呼びかけると共にこの陶芸文化がこれからも継承されてほしいと願っています。
(写真提供:九鳥陶燒在台東 )
もう一名の傑出した陶芸家である廖光亮先生はパイワン族の出身で、台東初鹿新班鳩に九鳥陶燒工作室(スタジオ)を創立しました。廖先生は「異なる民族と芸術、そして文化を知る中でこそ輝かしく多彩な芸術性が引き出される」という考えを創作理念としています。九鳥陶燒工作室は創作活動の拠点として作られただけではなく陶芸文化園としての機能も有しています。ここには電気釜やガス窯、薪窯といった多数の陶窯施設があり、さまざまな種類の陶芸作品を作り上げることが可能です。
廖先生は伝統的な技法を用いる他にも地元の素材(流木やアテモヤの枝)を積極的に取り入れることで現代的な要素を持った独特な味わいのある作品作りを行っています。九鳥陶燒では創作活動を行う以外にも陶芸文化の推進に力を入れて取り組んでおり、同工房では陶窯見学や陶芸講座、DIY体験ができる陶芸技術指導教室を定期開催しています。この活動は一般の人々が陶芸の魅力に触れられるだけではなくプロの芸術家達と交流できる良い機会となっています。
(Photo credit: 九鳥陶燒在台東 )
台東の陶芸家達は地域文化の継承に力を入れて取り組むだけではなく、積極的に国際社会との交流を行っています。台東県政府が推進している「南島漣藝」国際交流計画ではタイ・シンガポール・トンガといったオーストロネシア語圏の国々で暮らす芸術家を作品製作の為台東に招き、国を越えた文化交流を図ることで地元芸術家達の創作意欲を向上させると共に台東のオーストロネシア文化を世界に伝え広めています。
(写真提供:Taitung County Government)
2023年、九鳥陶燒工作室と他5つの台東を代表するブランドがシンガポールで開催された「FIND:Design Fair Asia」に参加し、台東の魅力的な陶芸作品を展示したことで国際社会から広く注目されました。このように国際交流は台東陶芸の知名度を向上させてくれるのみならず地元芸術家達に新たな創作アイディアとチャンスを与えてくれるのです。
(写真提供:九鳥陶燒在台東 )
台東のオーストロネシア陶芸は継承と革新の力により変化を遂げつつあります。哈匿·扎丮と廖光亮などの芸術家達の努力によって伝統的な陶芸技法が保存と発展を遂げている所に現代芸術の持つ革新的な要素が取り入れられるようになりました。これは台東の文化景観を豊かにしてくれるだけではなく、オーストロネシア文化の継承と発展においても新たな道筋を開拓してくれていると言えるでしょう。グローバル化が進む中、台東の陶芸は文化的魅力を世界に向けて発信し続けており、この行動は台湾文化の力を示す上で重要なファクターとなっています。伝統と革新を融合させたこの芸術活動は貴重な文化遺産を保護すると共に台東の文化産業の発展に力を与え、文化継承に大きな可能性があることを示唆しています。
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