物語を醸す 台東原住民の酒文化に刻まれた時の印

台東の大地には、数千年の知恵が息づいている。アミ族やパイワン族にとって、酒は単なる飲み物ではなく、祖霊と人間を結ぶ神聖な媒介である。伝統的な部落の酒造職人たちは、地元産の小米（アワ）や糯米（もち米）をベースに、野菊花、大葉田香、過山香、山素英、艾草、山澤蘭、艾納香、雞母珠、紅骨九層塔の九種の植物を組み合わせて酒麹を作る。それぞれの植物は独自の役割を持ち、酒に独特の香りと風味を与えるだけでなく、祭典や儀式において天地をつなぐ神聖な機能を果たしている。こうした伝統は、台東県政府と農業部台東区農業改良場の支援のもと、体系的に保存・発展が進められている。

酒は部落の文化の中で、単なる嗜好品を超えた存在だ。毎年の豊年祭では、長老たちは酒を通じて祖霊と対話し、若者たちはその年に優れた成績を収めなければ酒を口にする資格を得られないという厳格な伝統を守っている。この文化は、部落の結束を強めると同時に、自然への敬意を継承する重要な役割を担っている。酒造りの過程では、部落の女性たちが族語の古謡を歌いながら酒に生命と祝福を吹き込む。この伝統には科学的根拠もあり、専門のワイン醸造家によると、これらの歌が実際に発酵を促進し、酒の風味をより豊かで生き生きとしたものにするという

現代化の波が押し寄せる中、台東の若い世代は、伝統的な酒造文化の復興に積極的に取り組んでいる。その代表格がアミ族の若手醸造家、許震詮が創設した「出力釀」だ。彼の酒蔵は、台湾で初めて正式な製造許可を取得した原住民の伝統酒造場である。彼は8年前に東海岸へ戻り、岳母である陳艶庭のもとで酒造を学び、さらに縱谷の電光部落、東海岸の長濱部落、都蘭部落の酒造の長老たちからも教えを受けた。

「出力釀」の挑戦は、単なる伝統の継承にとどまらない。2020年には、「Malikuda都蘭牽手酒」を発表し、アミ族の糯米酒とニュージーランドのワインを融合させるという世界初の試みを実現した。この革新的な試みは、新東糖廠の酒蔵を拠点とし、台東県政府と農業部台東区農業改良場の支援のもと、伝統技術と現代の革新を組み合わせた新たなビジネスモデルとして確立されている。ただ酒を造るだけでなく、文化体験の場を提供することで、より多くの人々に台東の酒造文化の奥深さを伝えている。