祖霊の目である神聖な宝

パイワン族にとって、トンボ玉は「mata」と呼ばれ、「目」を意味します。これは祖霊の目であり、守護の象徴でもあります。色鮮やかなビーズは装飾品であるだけでなく、深い文化的意味を宿しています。一昔前、トンボ玉を所有できるのは貴族階級の人々だけであり、身分や威厳の象徴とされていました。ビーズ一つひとつには名前と伝説があり、たとえば「太陽の子」は光と祝福を象徴し、首長の家系のみが所有できるものでした。「祖霊の目」は、部族を守る力があると信じられています。これらのデザインには、パイワン族の祖霊信仰、自然観、生命循環への理解が表れています。

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(写真提供: @yu_an1230)

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儀式における神聖な存在

トンボ玉は、祭祀、婚礼、成人儀礼などの重要な儀式で重要な役割を果たしています。単なる儀式用品ではなく、権威と富の象徴でもあります。所有するビーズの数は財力の象徴であり、婚礼の際に新郎が贈ることでその高貴な家系を表します。台東県政府もこの文化価値に注目し、トンボ玉の保存と継承を積極的に推進しています。これらのビーズには、命、愛、勇気にまつわる深い意味が込められ、部族の文化的記憶が息づいています。

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(写真提供:@annniehhh)

復興への第一歩

1970年代、クマス・ジンゲルは台湾各地を巡り、トンボ玉制作の技術を探しました。最終的に新竹で技術を学び、1976年には台湾初のトンボ玉工房「雷賜琢磨藝房」を設立し、消えかけていた技術の再興に尽力しました。台東では、「角琉璃」や「卡塔文化工作室」といった文化実践者が、パイワン族のビーズ技術の保存と革新に取り組んでいます。太麻里郷大王部落にある角琉璃は、職人・呂鈞の指導のもと20年かけて80種以上のオリジナルデザインを生み出し、50回以上の展示会にも参加。100%手作りという職人技の価値を訴え続けています。

卡塔文化工作室

(写真提供:卡塔文化工作室)

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伝統と革新の融合

卡塔文化工作室では、代表の林秀慧が13名の仲間を率い、50種以上のビーズ図案と36の象徴的な意味を厳格に管理・保存しています。旧台東製糖工場の倉庫を活用した「這裡r原味工藝聚落」に拠点を構え、来訪者に原住民文化の手仕事を間近に感じてもらえる空間を提供しています。伝統的なデザインと意味を維持しつつ、現代的な美学と技術を取り入れた作品を制作。角琉璃は台東の自然からインスピレーションを得て、文化の垣根を越えたデザインで観光客の注目を集め、卡塔文化工作室は学校教育と連携して子どもたちに地元文化を教えています。展示、体験講座、商品開発を通じて、トンボ玉に込められた祝福と物語を広く発信しています。

文化の光を未来へ

1200度近い高温で、直径8ミリのビーズに0.2センチの色棒を用いて細かな模様を一つひとつ手描きするトンボ玉制作。職人が一日に作れるのは約40個で、最終的に厳しい検査を通過できるのはそのうちの6割ほどという、高度な技術を要する工芸です。パイワン族の文化拠点としての台東では、職人たちの努力により、伝統文化が再び息づいています。トンボ玉の復興は、パイワン族の文化継承を支えるだけでなく、部落の経済活性化や文化観光の魅力向上にもつながり、この貴重な伝統が現代社会で再び輝きを放つための力となっています。

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(写真提供:@from_the_easto_the_east)

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