(写真提供:博雅齋自然茶園)
台湾東部の茶所:台東には、紅烏龍茶というユニークなお茶があります。2008年に鹿野で誕生して以来、茶葉の甘味と果物のような香りにより愛好家達の心を捉えて離しません。豊かな香りと美しい琥珀色をした紅烏龍茶は烏龍茶と紅茶の製造技術を組み合わせて創り出されています。
紅烏龍茶は萎凋、浪菁、揉捻、乾燥という四つの工程を経て丁寧に作られたご馳走のようなお茶で一つ一つの作業にお茶職人達の想いがぎゅっと詰まっています。
(写真提供:台東紅烏龍)
萎凋(日に当てる工程)は例えるのなら美味しい食事を味わう前に酔いを覚ますようなもので、摘み取ったばかりの新芽に空気を取り込ませることで成分が広まりやすくしてくれます。この工程が茶葉を柔らかくしてくれるおかげで次に行なう発酵への準備がスムーズに行われます。浪菁(空気を含ませる工程)は繰り返し攪拌することを指しており、空気中の酸素と触れ合うことにより紅烏龍茶の持つ独特の香りを作り出します。料理で言うところの味付け工程の揉捻(手揉み工程)を行うことで紅烏龍茶の複雑な味わいを作り出すと共に茶葉の組織を傷つけて風味を出しやすくすると共に丸みを帯びた形に形成します。
(写真提供:饗嚮台東)
乾燥は熱風を利用して行われ、茶葉の水分量を低下させることにより味わいを茶葉に封じ込め、美しい色合いと香りを持つお茶を創り出すことができるのです。
烏龍茶の持つ芳醇なコクと紅茶の香りを持ったこの斬新なお茶は、その独特の風味により多くの愛好家たちの舌を魅了しています。透明感のある琥珀色をしたお茶からは芳香な香りが立ち上がり、甘い口当たりで余韻を長く楽しめます。大自然からの贈り物とも言えるこのお茶には台東のお茶職人達の想いが込められています。
紅烏龍茶の魅力はお茶職人達の技術だけで生み出されたのではなく、天から授けられた台東の美しい汚染のない土壌で栽培された上等な茶葉とも切り離すことができません。多くのお茶農園は農薬や化学肥料を使わずに、環境に優しく安心していただけるお茶栽培を行っています。果実のような香りが楽しめる紅烏龍茶はおよそ1ヘクタールの茶園から平均400斤しか生産できず、お茶職人が心を込めて栽培し、丁寧に摘み取った一心一葉を使用するなどピュアな原料のみにこだわった生産が行われています。
(写真提供:台東紅烏龍)
このお茶の香りを世界に広める為に台東県政府は「台東紅烏龍茶」ブランドを積極的に立ち上げました。厳格な品質基準を設けて原産地証明書を発行し、農薬検査による茶葉の品質管理を行い、国家基準の審査員による茶葉評価を行って合格点に到達した茶葉にのみブランド認証マークを与える対策を行いました。政府は紅烏龍茶の多角的なマーケティングを行う上でお茶生産者の販売支援として協同組合を作り生産と販売のリソースを統合することで生産者に有利な価格で茶葉を購入してもらえる好循環環境を形成しました。鹿野のお茶農家によって設立された紅烏龍合作社を例に取ると、厳格な品質評価システムと環境に優しい農業環境によりフェアトレードを可能とし、紅烏龍茶の品質を守っています。協同組合はブランドマネジメントにも力を入れて取り組んでおり、特徴的なビジュアルデザインやSNS運営、体験活動といった多様なプロモーション活動によって消費者との距離を縮めて紅烏龍茶の認知度を向上させています。
(写真提供:博雅齋自然茶園)
一方、県政府は「台東紅烏龍產地風味示範亮點輔導計畫(台東紅烏龍茶を広める為のプロジェクト)」を行い、紅烏龍茶の風味を生かした料理製作の開発指導を行える店舗を選出、異業種との連携やブランドマーケティングなどを通して紅烏龍茶の多目的利用を促進すると共に台東紅烏龍茶の産地ブランドイメージを確立しています。関係者による努力のおかげで台東紅烏龍茶は徐々にその頭角を表し始めており、鹿野にある博雅齋紅烏龍で生産されている紅烏龍茶はその素晴らしい品質が評価されてベルギーのiTQi優秀味覚賞で八年連続星三つを獲得する最高栄誉を得ました。これは世界で初めて長年賞を獲得している紅烏龍茶ブランドであり、この功績により紅烏龍茶は全世界に認められてその知名度を高めました。
美味しいお茶は美しい色合いが楽しめるだけではなく、生産地の風味が凝縮されています。台東の紅烏龍茶は一口いただくだけで台東の大地が育んだ清らかさとお茶職人達の技術や心意気が伝わってきます。果実のような繊細さにナッツのような香ばしさが加わった香りはホットでもアイスでも楽しめます。
芳醇な香りの台東紅烏龍茶を淹れて、その香りを感じながらスローライフを堪能してみるのはいかがでしょう。台東の素晴らしい大自然に感謝しつつ、農家の活動を応援し、この素晴らしいお茶の香りが永遠に続くよう、育んでくれた大地を一緒に守っていきましょう。