夏雪マンゴーの誕生は、14年にわたる育種の歩みから始まった。地元で親しまれてきた土マンゴーを母本とし、農業改良場の研究員・李雪如が選抜と育成を重ねた。マンゴーは他家受粉作物で、一粒の種をまいてから花が咲き、実をつけるまでに5年から6年かかることもある。多くの子孫は期待通りの性質にならず、理想的な株を選び出すのは簡単ではない。系統比較試験や地域試験栽培を経て、夏雪は2008年に正式に命名・登録された。台湾で初めて品種権を取得し、いわば専用の身分証を持つマンゴーとなり、「マンゴーの中のビトン」と呼ばれるようにもなった。

(Photo credit: 太陽農場)
一つで味わう、三つのおいしさ
愛文マンゴーの鮮やかな赤とは異なり、夏雪の果皮は黄金色から橙黄色。果肉はきめ細かく、鮮やかなオレンジ色をしている。一口食べると、土マンゴーの濃厚な香り、愛文マンゴーのきめ細かな食感、金煌マンゴーの甘みが一度に広がる。一個の重さは約400から550グラムで、一般的な愛文マンゴーの約300から500グラムと比べても、ふっくらとした大きさが特徴である。糖度はおよそ12から15度で、15から18度ほどある愛文マンゴーほど強い甘さではなく、酸味も愛文より控えめ。甘さがありながら重たくならず、後味はすっきりとしている。可食部の割合も高く、100グラムあたり1.9グラムの食物繊維とビタミンAを含み、夏を代表する希少な果実の一つといえる。

(Photo credit: 太陽農場)

(Photo credit: 太陽農場)
土地の恵みが生む、ほのかな蜂蜜の香り
興味深いことに、夏雪は当初、台湾中南部や東部で試験栽培されていた。しかしその後、台東で育てた果実だけに、後味にほのかな蜂蜜のような香りが感じられることがわかった。十分な日照、温暖な気候、澄んだ空気を有する台東の環境が夏雪の個性をちょうどよく引き出し、今では夏雪と台東は切り離せない存在になっている。台湾全体の夏雪の栽培面積は約300ヘクタールで、そのうち台東と屏東が約200ヘクタールを占める。参考価格は600グラムあたり約150元から200元で、愛文マンゴーの2倍から3倍ほどになる。収穫期は初雪のように短く、一年のうち約42日ほどしかない。2026年は6月中旬から7月中旬ごろが見込まれている。夏雪は樹上で自然に熟してから収穫する必要があり、果皮の約8割が黄色くなった頃に、香りと甘みが最も引き立つ。
一つひとつが大切な果実
夏雪はとても繊細なマンゴーである。暑さにも雨にも弱く、成熟を急がせることもできない。少し手を抜けば、一年かけた仕事が無駄になることもあり、栽培には多くの手間がかかる。台東縦谷の山麓で、農家三代目の游鈞超が営む太陽農場では、環境に配慮した低密度栽培を行っている。草生栽培を取り入れ、澄んだ沢の水を灌漑に利用。除草剤は使わず、人の手で草を取り除いている。小さな実がつき始めると、一つずつ摘果を行う。育ちのよくない実は取り除いて土へ戻し、残した果実には一つずつ袋を掛け、虫や擦れ傷から守る。なかでも最も大切なのが熟度である。夏雪は人工的に追熟させることができず、木の上で自然に黄色くなるまで待たなければならない。熟した実を一つずつ見極めて収穫し、その日のうちに箱詰めすることで、豊かな香りを果肉に閉じ込めたまま届ける。手元に届く一つひとつの夏雪は、こうして大切に育てられている。


(Photo credit: 太陽農場)

(Photo credit: 台東県政府)
海外へ羽ばたく、新たな台湾の誇り
こうした積み重ねによって、夏雪は少しずつ知られる存在になった。約10年前、強い台風ニパルタックによって果樹園のほとんどが被害を受けたが、父子はそこで諦めなかった。もう一度畑を立て直し、「地域に根ざすほど、世界へつながる」というブランド精神を発信してきた。現在、太陽農場の夏雪は高級志向の商品として展開されている。A級の果実を選び、一つずつ保護ネットを掛け、品種ライセンスシールを貼り、上質なギフトボックスに収める。贈答用にも、自宅で楽しむためにも選ばれている。香港には毎年購入する熱心なファンもおり、これまで東南アジアへ輸出されたほか、ドバイの売り場に並んだこともある。

(Photo credit: 太陽農場)
今年は初めてカナダの貿易会社との商談も始まった。コールドチェーン配送を活用することで、産地から到着地まで、鮮度をほぼそのまま保つことができる。近年は台東県政府も、高級ギフトボックス、企業向け共同購入、電子商取引、海外輸出などの販路拡大を支援している。夏雪は釈迦頭に続く、台東を代表する、ひときわ輝く夏の名物となり、台東の味を海外へ届けている。



