
(写真提供:台東スローフード)
海水が濁るとき
興味深いことに、濁った海水こそが網を打つ絶好のタイミングとなる。満ち引きが入れ替わり、水流が小石を巻き上げて海水を濁らせる時間帯を、集落では masi’ac と呼び、これは tafokod、すなわち投網漁に向いた好機である。毎年4月から7月にかけて、回遊性の小魚であるサイウオが東部海岸に姿を見せる。初夏の夜、台11線沿いの海上には、三つ四つのヘッドライトがちらちらと揺れている。それは海の狩人たちが milakelaw、すなわち夜間に灯りで魚を探す漁をしている姿である。
濁りの位置は毎日変わる。数日前には岸から遠く離れていた濁った水が、数日後には岸辺からわずか数歩の距離まで近づくこともある。アミ語の「mi」には、自ら進んで行うという意味がある。採集は、欲しいと思えばいつでも手に入るものではない。多くの場合、海が与えてくれる時に、人間がたまたまそこに出会えるものなのだ。

(写真提供:台東スローフード)

(写真提供:台東スローフード)
塩は、陸に上がって最初の工程
投網にはコツがある。方向を見極め、手を離す瞬間を逃さず、思い切って投げる。サイウオは大きな魚を避けるために濁った水の中へ潜り込むため、水の勢いに逆らうようにしなければ捕まえられない。この魚は体長わずか6から10センチほど。下あごのひれは細い糸のように伸び、鱗は触れただけで落ちてしまう。網にかかった後も、必死に逃げようとする。それは生き物が生き延びようとする本能である。
漁獲が陸に上がった後の最初の工程は pacina である。cina は塩を意味し、魚をすばやく塩で覆って身を引き締め、それから海水で洗い流して保冷箱に入れる。この工程を欠くと、魚はすぐに傷んで異臭を放ってしまう。塩をまぶす作業は、まさに時間との戦いである。

(写真提供:台東スローフード)
小さな魚のさまざまな味わい方
適切に処理されたサイウオの食べ方は実に多様である。獲れたての新鮮なものは sasiraw(塩漬け)にして長期保存できるほか、刺身にしてそのまま鮮やかな甘みを味わうこともできる。火を通して食べるなら、約170度の油でそのままカラりと揚げる。サクサクでふんわりとした食感は病み付きになり、冷たい炭酸飲料と合わせれば思わずうなるほどの美味しさである。投網、塩漬け、そして食卓に上るまで。季節限定のこの小さな魚は、集落と海が共生してきた飲食文化を、見事にひとつにつないでいる。
足りたら、それでいい
たくさん獲ることよりも、部落の人々が重んじるのはちょうどよさである。部落には、足りたら、それでいいという言葉が伝わっている。海から持ち帰ることができる分量は、すでに天によって定められている。家族が十分に食べられ、ほかの仲間たちにも分け合えるだけあれば、それで十分なのだ。どれほど多く獲ってもすべてを持ち帰ることはできない。余った分は海に残しておく。
だからこそ、彼らは漁場に入る前に、捕獲の対象や数量をあらかじめ決めることはない。ただ自然に問いかけ、長期の観察の中で積み重ねてきた知識を、世代を超えて受け継がれる知恵として内面化していく。時があってこそ食がある。必要な分だけをいただき、喜んで分かち合い、自然の循環を尊重する。その暮らしの姿勢こそ、台東県政府が近年積極的に推し進めるスローフードの精神の中で、最も人々の心を打つ奥深さなのである。

(写真提供:台東スローフード)
2026台東スローフード・フェスティバル
スーパー台東テーブル
会場 │ 台東旧駅エリア・旧駅鉄道芝生広場(台東市)
日期 │ 2026年7月4日~5日 15:00~21:00
自然との共存と調和を体現している台東スローフードフェスティバルは限りある資源と生活リズムを大切にしながら地方文化と伝統を守り、サステナビリティ思想が世界的な広がりを見せる中、地方都市の再発展に取り組んでいます。スローフードフェスティバルはただの恒例行事などではなく、文化の推進者であると共に台湾全土の生態系に大きな改革をもたらし、世界に向けて創造力に支えられた台湾のサステナビリティ力を発信し続けてゆきます。





