芋頭(タロイモ)は、オーストロネシア語族の独木舟とともに海を渡り、百年以上前から蘭嶼に根付いてきました。植物学者からカヌープランツ(独木舟植物)と呼ばれるこの作物は、島特有の環境の中で多様に発展し、水芋と畑芋を合わせて二十種類以上が栽培されています。その数は、同じオーストロネシア文化圏に属するフィリピン・バタネス諸島を上回ります。日本時代に動物学者・鹿野忠雄が記録した アラレン(Alaleng)、白色芋 オピノヤヨ(Opinoyayo)、礼芋 ララコアソリ(Rarakoasoli) などの古来品種も、現在なお島の畑で受け継がれています。

(写真提供:蘭嶼魚尾人手作工坊)
タオ族女性の海と畑
島には「mangap so kanen」という言葉があります。畑へ行き芋頭を採る、という意味で、タオ族にとって食事は炊飯器を開けることから始まるのではなく、畑に足を運ぶことから始まります。タオ族の女性にとって、芋畑は男性にとっての海と同じ存在であり、生活と食卓を支える重要な基盤です。水質や土壌、地形に応じて品種を管理し、一つの畑に五〜六種類の芋頭を同時に植えます。農薬は使わず、アカウキクサ(満江紅)やアオウキクサ(青萍)といった水生植物が養分を与え、鳥やカエルが害虫から作物を守ることで、自然と共生する伝統農耕の知恵が今も息づいています。

(写真提供:@tommot8785)

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儀礼と習俗に息づく文化の核
蘭嶼において芋頭は、単なる食材ではなく、生活儀礼の象徴です。大型船の進水儀礼では、女性たちが伝統衣装を身にまとい畑で芋頭を掘り、茎付きの芋頭を山のように積み上げて船全体を覆います。祝祷歌を捧げた後、船は海へと送り出されます。新居の完成や新生児の命名といった重要な場面でも水芋が用いられ、豊かで立派な芋頭を育て、儀礼で分かち合うことは、農の順調さと家族の耕作力を象徴します。

(写真提供:蘭嶼魚尾人手作工坊)
伝統の味から島の料理へ
茹でた芋頭に飛魚の干物を添えた料理は、蘭嶼の定番です。芋頭の茎も無駄にせず、干魚と蒸したり塩漬けにしたりして副菜にします。毎年のミンガナンガナには、女性たちが二、三種類の芋頭を混ぜてタロイモ餅(芋頭餅)を作ります。皮をむいて搗き、燻製肉から滴る豚脂と、潮間帯で採集した蟹肉を加え、大きな一皿として供されます。現在、この芋頭餅を作れるのはごく限られた母親たちのみであり、その技は非常に貴重です。

(写真提供:蘭嶼魚尾人手作工坊)

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