台東は中央山脈と海岸山脈に囲まれた清らかな土地で、
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(写真提供:@jiapei_gowild )
台東は中央山脈と海岸山脈に囲まれた清らかな土地で、豊かで多様な地形景観を育んできました。聳え立つような嘉明湖から果てしなく続く山々の稜線まであらゆる地形が地殻変動の壮大さを物語っています。沢登りはスポーツであると同時に、時空を超えた地質の中を冒険する楽しさに溢れており、渓流で前へと進む為に踏み出した一歩は大自然との対話であると言えるでしょう。温もりを感じる岩壁についた手のひらからは千年という時が石の上に刻んだ繊細な痕跡を、そして足底からは踏みしめた小石の持つ滑らかさや丸み、時には岩盤の硬さをも感じられます。四方八方から押し寄せるように流れてくる渓水による抱擁は涼しさをもたらし、自然の持つ純粋な生命力を感じさせてくれます。
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(写真提供:@phoenixhsnuchang )
知本渓を例に挙げると、渓流の両側が海底火山の噴火により隆起しており、何千万年という長い年月によって形成された玄武岩層が渓水によって素晴らしい紋様を刻み上げています。沢登りでは自然が作り出した天然の地質博物館を探索しながら滝から流れ落ちる水飛沫を感じたり、深い水辺で休憩したりと緑豊かな山々が作り出した静かな景観を楽しめますし、暑い夏には知本森林遊樂區内の渓谷上方にある樹齢百年を超えるガジュマルの気根が作り出した日陰で涼むこともできるでしょう。水辺周辺では大小様々色とりどりの蝶々が羽ばたき、渓流温泉で悠々と泳ぎ回るリュウキュウカジカガエルに巡り合う事もあるかもしれません。こうした自然との出会いは沢登りに限りない楽しみを与えてくれます。
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(写真提供:@airnekao )
上記とはまた違った地形美を見せてくれる麻荖漏溪は全長1.16キロで火成岩と堆積岩が交互に積み重なった階段状の地層で形成されており、ジグザクとしたルートを進み天然の洞窟を抜けると標高540メートルから流れ落ちる「天使の涙」と呼ばれる新港瀑布にたどり着きます。そこでは太陽の光を反射した色鮮やかな虹の影が息を呑むような自然風景を形成しています。
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(写真提供:@airnekao )
しかしトレッキングや沢登りの楽しさを満喫する一方で「リーブ・ノー・トレース(ダメージを残さず自然を残そう)」の七原則を実践することが重要視されています。特に台東のような豊かな自然環境では「事前の計画と準備」を忘れてはいけません。中華民国山岳協会の規定により入山ガイドは山林スキルを有している必要があり、同協会は民間団体「羌虎跨域生活」と協力して台東地区で定期的にトレーニングコースを開催しています。このコースでは参加者に20回以上の登頂経験や5日以上の長距離トレッキング経験等の豊富な登山経験や十分な専門スキルを有している事を求めており、このような対策により、入山ガイド達は十分な専門知識と安全意識を持っていることが保証されています。
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(写真提供:嘉明湖竑閩企業熊出沒團隊 )
またアウトドア活動において環境を維持する為の「ゴミの適切な処理」と「見たものはそのままに」という環境本来の姿を維持することも守るべき鉄則となっています。台東林務局では「持続可能な山林維持の為に一人一キロ背負おう」という環境活動を行なっており、沢登りの装備を運ぶ際は道中でゴミ拾いを行うことが推奨されています。これは自然を訪れる全ての人がゴミや食べ物、食べ残しといった山に持ち込まれた全てのものを持ち帰ることに責任を持ち、清潔な環境を維持して野生動物をむやみに引き寄せ生態系を乱すことを防ぐことにつながっています。
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(写真提供:@sara432152 )
台東での沢登り体験は参加者の体力とスキルを試すだけではなく、自然を尊重する意識を育めます。こういったアクティビティに参加した人々が環境保全の大切さを深く理解し、山林の守り手が育ってゆくことが期待されています。生命力に満ち溢れたこの土地で体験する沢登りはきっと忘れられない冒険と生命力に満ちた自然との触れ合いになることでしょう。