






3つのポイント
- 台東では毎年7万トンを超える稲わらが発生します。回収して作られた稲わらマットは、卑南渓の露出した河床や公共工事現場の裸地に敷かれ、風による砂ぼこりを抑えています。
- 関山鎮の稲わら循環拠点では、一期作ごとに約300トンの稲わらを梱包し、作物のマルチ材や編みマットとして活用。マットは雑草抑制用の銀黒ビニールシートの代わりにもなります。
- 台東市の富豊コミュニティは、稲わらを地域の手仕事に生かすモデルです。石山部落では収穫後の稲わらとアミ族の編み技術を組み合わせて祈願のお守りを作り、旅行者向けの手作り体験も行っています。
なぜ台東の稲わらに新しい行き先が必要なのか?

量が多いうえに、処理できる期間が短いからです。台東で最も作付面積が広い作物は水稲で、年2回の作付けで約1万2000ヘクタール、毎年7万トンを超える稲わらが残ります。一期作と二期作の間はわずか1か月。

多くの稲わらは収穫後に細かく刻んで田に残されますが、処理費用は1ヘクタールあたり6000台湾ドルにもなります。一期作の稲わらが分解しきれないと、苗の窒息障害を引き起こし、次の稲の生育に影響することもあります。稲わらを厄介ものにするのではなく、新しい「仕事」を見つけてあげよう――それが台東の発想です。
卑南渓の河床に敷かれる稲わらマット

台東県環境保護局は、回収した稲わらで稲わらマットを作り、卑南渓の露出した河床や公共工事現場の裸地に敷いています。処分に困っていた余剰資材が、環境対策の資材に生まれ変わったのです。1枚の稲わらマットには、3つの役割があります。
- 砂ぼこりを抑える:裸地を覆い、強風で舞い上がる砂ぼこりを減らします。
- 保湿・保温:地表の水分と温度を保ちます。
- 自然に分解:天然素材なので、使用後は自然に分解されます。
同じマットは田畑にも戻っています。台東区農業改良場は関山鎮の稲わら循環拠点を支援しており、一期作ごとに梱包機で50ヘクタール分、約300トンの稲わらを処理し、作物のマルチ材や編みマットとして活用しています。2026年9月に鹿野で開かれた稲わら再利用の講習会では、研究員が稲わら編み機で作るマットを紹介しました。畑でよく使われる銀黒ビニールシートの代わりに雑草を抑え、除草剤の使用も減らせます。地面に敷くだけでなく、稲わらは「祈り」を編むこともできるのです。

縄ない機が結んだ縁

日本のお守りと稲わらにどんな関係があるのか、想像しにくいかもしれません。その答えは台東の富豊コミュニティにあります。石山部落とも呼ばれるこの地域の住民はアミ族が中心で、この100年余りの間に商業港と空軍基地の建設で2度移転を余儀なくされ、水田を失いました。部落には代々受け継がれてきた編みの技があり、年配の人たちは農閑期に月桃の葉鞘で手提げかごや背負いかごを編んできました。富豊コミュニティ発展協会の宋博芳理事長は、月桃編みを広めるにあたり、材料の準備時間を短縮できる機械を探し回りました。そこで嘉義県で出合ったのが稲わらの縄ない機で、思いがけず縄づくりの事業が始まったのです。台湾の東部と西部では稲の品種が異なるため、当初は縄がよく切れ、試行錯誤を重ねてようやく軌道に乗りました。注連縄は一時、毎年コンテナ1本分が日本へ出荷されていたといいます。部落はこの注連縄をもとに改良を加え、近くの田んぼから集めた稲わらを、豊かな実りへの願いを込めたお守りに編み上げています。
お守りのほかに、富豊コミュニティの稲わらは何になる?

稲わらは月桃や流木とともに、住まいのエコ建材にも生まれ変わっています。石山部落は2026台湾国際インテリアデザイン博覧会に出展し、月桃の香りがする硬質・軟質のボード、軽量鉄骨天井材、稲わら編みのタペストリーなどの生活用品を紹介しました。宋理事長によると、部落は天然素材を供給するだけでなく、経験豊かな工芸チームを擁し、オーダーメイドにも対応できるといいます。編み物の産業が形になるにつれ、6つの家族が部落に戻り、工房で一から技術を学んでいます。
石山部落で、自分だけのお守りを編もう

部落体験ツアーを手がける事業者もあり、毎年100団体ほどが訪れています。旅行者はこんな体験ができます。
- 石山部落を巡り、海岸山脈最南端の田園風景を楽しむ。
- 稲わらのお守りを手作りし、豊かな実りの願いを持ち帰る。
- 部落が用意する郷土料理を味わう。
卑南渓のほとりの稲わらマットから、旅行者の手の中のお守りまで。収穫を終えた稲わらは、台東で第二の旅を始めています。



