気候変動や食品の安全が直面する脅威から、持続可能な農業発展の重要性が浮き彫りになっている。
台東県政府はこの傾向を鑑みて2023年9月から国際有機運動促進会などの組織に積極的に参入し、有機農業の発展に力を入れて取り組むと共に「關山鎮梓園有機農業促進区」を設立しました。この場所は花東地区で初めての促進区であるのみならず、182ヘクタールという台湾最大の大きさを持つ有機農業デモンストレーション区として今後に対する重要なマイルストーンになっています。
(写真提供:梓園碾米工廠 IG@zi_yuan888)
有機農業促進区とは指定区域内で化学肥料や農薬に頼らず有機農法を推進する取り組みを指しています。百名を超える農家がこのプログラムに参加しており、伝統農業を辞め、環境に優しい有機農法を実践しています。農家からの支持を得る為に県政府は国有地を四割引で提供した他、農業機器の補助金といった優待措置を行い、安全な環境で健康な作物を育てられるよう技術指導を行う人材を積極的に導入し、植え付け手順の改良などを行なった。
有機農法の利点は従来の農法にありがちな土壌の化学汚染を減少させ、環境と生物の多様性を保護できる点にあると言えるでしょう。有機農法は肥沃な土地を生み出すだけではなく、持続可能な生態系の保護にも貢献しています。また、消費者は残留農薬の不安がないエコサート認証された有機農産品を食べられる安心感を得ることができますし、促進区周辺の実に84%がエコサート、もしくはエコフレンドリー認証を受けていて地域全体の土壌品質を向上させていることから近隣田端から汚染物質が入り込む問題も解決しています。
(写真提供:梓園碾米工廠 IG@zi_yuan888)
(写真提供:台東縣政府)
さらに、有機農業は農民に収入と生産面の安定を与えてくれました。促進区を例にとると、この地は以前透き通るような透明感と濃厚な香りを持つ「皇帝米」の生産地で日本統治時代には天皇陛下御用達のお米として有名でしたが、時代の推移と共に付加価値が徐々に低下していきました。そこで有機栽培を取り入れ地元の特性を生かした栽培方法に切り替えたことから農産物の付加価値が大幅に上昇し農家の収入増加に貢献しています。
環境保護と有機農業の推進をリードしてきた台東県は統計によると1,328ヘクタールの土地がエコサート認証を、1,139ヘクタールがエコフレンドリー農業の認証を受けており、この二つを合わせた計2,467ヘクタールが有機農業農地である。これは台湾全体の中で有機栽培に取り組んでいる面積の12%を占めており、全国第三位の大きさである。これらのことからも台東の農民達が有機農業に対して熱意とやる気を持って真剣に取り組んでいることが伺えます。
(写真提供:台東縣政府)
インフラ整備だけではなく、県政府は2024年5月に台北遠東SOGO忠孝館にて「島東風味探索(台東の味を探求する)」有機スローフードマーケットを開催し、台東の持つ独特の魅力を多くの人々にアピールした。20組を超える農家が有機栽培された果物や穀物類、塩といったものを出品し、台東にある19軒のスローフードレストランがフェアトレードと環境保護をコンセプトにした創作料理を披露した。専門家はお茶、お酒、お米、魚、塩といった文化的意義がある地元食材についてのレクチャーを行い、館内では台東出身の芸術家高敏書がリサイクル素材で製作したアート作品が展示するなど、一度のイベントでオーガニックライフの可能性を余すことなく示しました。
有機農業は環境保護の重要な手段であるのみならず、食の安全や農家の生計に対しても大きな影響を与えていてまさに一石何鳥にもなる方法と言えるでしょう。梓園有機農業促進区が有機農業をリードすることにより多くの人々に有機農業の理念が根付き、今後影響力が拡大してゆくことが期待されています。台東は持続可能な農業の理想に向かって大きく一歩踏み出しており多くの産地が台東に倣って環境保護や健康的な食生活を行っており、今後人類の持続可能な発展に向けてさらに力を合わせて協力してけることを願っている。