デジタル化の流れが押し寄せ、チェーン書店が次々と閉店する時代にあって、台東県では独立系書店の経営者たちが「読書」を地域との対話の出発点とし、静かに文化継承の使命を守り続けています。
関山鎮中山路にある關山有機書店は、中古本の交換という革新的なモデルを通じて、本を旅人と住民の間で自由に循環させています。地元の人々から親しみを込めて「關山小誠品」と呼ばれるこの書店は、「販売せず交換のみ」という経営方式を採用し、来訪者はわずか20元でお気に入りの本を持ち帰ることができます。さらに里壠案內所と連携し、「小さな町の案内人)、「山林の秘境」、「産地での食農体験」など多彩な体験を提供し、独自の読書文化を創出しています。

(写真提供:書粥)

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台湾初の「以書換宿」文化交流拠点
台東市内にある晃晃書店は、新刊と各地から集めた古本を組み合わせ、地元企画展や読書会を通じて多文化交流のプラットフォームを築き上げています。オーナーの素素は台北から台東へ移住し、書店経営に加え、台湾初の「以書換宿」宿泊モデルを創設しました。これは旅行者が本やCD、レコードで宿泊費を代替できる仕組みです。晃晃書店はクリエイターが台東を訪れる際の必訪地となり、地元小店と連携して「野蠻影展」を企画。イベントは書店から鹿野・池上・關山へと広がり、原住民、歴史、芸術などをつなぐ重要拠点となっています。
当番店長制度
長濱郷の書粥は、驚くべき経営モデルを導入しました。創設者の高耀威は、台湾中からの愛書家を募り、7日間ごとに交代する「当番店長」制度を設計しました。この方式は人手不足の解決だけでなく、空間の開放性を高め、多くの人々が経営に参加し、自分の物語を共有できるようにしました。その人気ぶりは「今年申し込んでも来年まで順番が回ってこない」と言われるほどで、この仕組みが広く支持されていることを示しています。

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(写真提供:@beizhenhu)

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15歳から76歳までの世代を超えた実験的プラットフォーム
書籍販売にとどまらず、これらの書店は地域参加への、コミュニティ運営の実験的な拠点にもなっています。書粥の歴代店長は15歳から76歳まで幅広く、それぞれの特技を生かして書店に新たな魅力を加えました。中には「本を買うと肖像画をプレゼント」という付加サービスを提供した店長もいます。また、書粥は長濱小學の子どもたちの「放課後クラブ」としても機能し、保護者が仕事を終えるまでの居場所を提供しています。台東県政府も文化政策を通じて、これら独立系書店の発展を積極的に支援し、読書しやすい環境を整備しています。

(写真提供:關山有機書店)
小さな書店、大きな力
これらの書店は規模こそ小さいものの、生活感あふれる、地域創生のエネルギーに満ちています。關山有機書店は里壠案內所と連携し、関山の歴史文化を知るガイドツアーを提供。晃晃書店は定期的に作家イベントや芸術活動を開催し、台東の文化拠点となっています。書粥は「収支均衡すれば満足」という経営哲学を実験し、異なる生活価値を提示しています。これらの独特な書店は、紙の本を読む温もりを守るだけでなく、旅人が台東の別の一面を知る重要な入口となり、東台湾の文化発展に絶え間ない活力を注いでいます。

(写真提供:關山有機書店)