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東台湾のオリジナリティが異郷人を惹きつける

アルゼンチンとスペイン出身のFederico小飛は幼少期からセーリングを愛し、その夢を追う為にスペイン・ニュージーランド・中国へと渡り様々なセーリングアクティビティに取り組み、その過程で中国語を学び縁あって台湾を訪れました。台湾を訪れた当初小飛はウィンドサーフィンをする為にヒッチハイクで台北から南部を目指したこともありましたが、残念なことに台湾は四方を海に囲まれていてもマリンアクティビティがあまり盛んではなかった為、彼に大きなカルチャーショックを与えることとなりました。幸いな事にその後、友人の招待によって台東を訪れた小飛は自然と経済が共存しながら発展しているこのスローライフシティを訪れることができたのです。

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豊かな水源や海洋資源を目にした彼はこの土地に強く惹きつけられ、ウィンドサーフィンを教える仕事に就いて定住することを決めました。四方を海で囲まれているとはいえ台湾でマリンスポーツは近付きにくいものとされており、子供が海でウィンドサーフィン体験を行う事に対して多くの親が不安を持っていました。その不安を払拭する為、安全な活水湖を初心者の練習場所として利用し、まずはウィンドサーフィンへの興味を持ってもらうことから活動をスタートしました。その為活水湖はウィンドサーフィンの普及においてきわめて重要資源として捉えられており、基礎訓練で充分な自信をつけてからウィンドサーフィンの魅力を体験するという流れを作ることで台東をウィンドサーフィン発展の地にしようと取り組んでいます。

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初心を貫き 台東に自分の技術を継承する

「私の強みは長い時間をかけて物事を成し遂げることです。」小飛はこの仕事を始めるにあたり政府機関への申請作業などで多くの壁にぶつかりましたが諦めることなく努力し前へ進み続けたことで周囲からの理解と支持を得ることができました。初心を貫き努力する彼の行動を尊重し、積極的に協力を行ってくれた人々の行動に小飛はとても感激したと話します。

一回きりのウィンドサーフィン体験クラスを開設すれば沢山の観光客が訪れてくれるかもしれませんが、小飛は子供への長期トレーニングに重点を置いており2019年から始まった台東ウィンドサーフィンスクールは毎年夏と冬にキャンプクラスを開設していて八歳以上の子供達にマリンアクティビティを教えています。「子供達が海洋資源と環境の保護について忘れることなく覚えていてくれることが大事」だと生徒たちがクラスを通じて持続可能な環境保護の精神を養ってくれることを期待しています。

環境保護を呼びかけ持続可能な開発目標を促進する

「生徒達には大自然のもたらしてくれる資源について色々な角度から知って欲しい。」小飛は生徒たちが彼の教えを通して海と大自然の重要性を理解し、持続し続けてゆく助けとなれることを期待している。その為にも彼は教育機関との長期連携を行っています。中でも台東女中では新入生をウィンドサーフィンクラスに参加させ、その体験と通して興味を持った生徒が参加する為のクラブを先輩達が設立し、二年間の訓練を積み重ねた三年生は海上練習をスタートさせます。このようにカリキュラムに取り入れた体験活動を行うことで基礎からプロへの人材育成に取り組む事が可能となり、2024年には台東女中の学生がウィンドサーフィン大会に参加するなど台東の誇りとなるような活躍を見せています。

動力源となるエネルギーが必要な船とは違い、台東ウィンドサーフィン学校で教えるのはスローライフを推進する台東にぴったりな負荷が少なく公害ゼロのアウトドアスポーツです。「台東に来たのはお金を稼ぐためではなく、海の側で沢山の人と関わり合って影響を与え合いたいと思ったからです。」と語る小飛。彼は経済的利益の為に環境を犠牲にすべきではなく、逆にこういった小規模活動を中心とした持続可能なビジネスモデルを展開し、地元文化や自然景観で多くの人を惹きつけることで経済と生態系の両方にとってより良い状況を作り上げることを実現しました。小飛は台東の波に乗って航海している間、次世代へ向けて自分の持つ技術の継承と環境教育を行い、共にこの土地と大自然を守り続けようと自然保護を呼びかけています。彼の風を追う旅は自分の暮らしを守る持続可能な取り組みでもあるのです。(Photo credit: Taitung Sailing)