四方を海に囲まれた緑島では、素潜りによる魚捕りが古くから島の漁民の生計を支えてきた。海人たちは息を止めて海に潜り、魚槍と体力を頼りにサンゴ礁の魚を捕らえる。かつては漁獲も豊富で、海に出て一時間ほどで千〜二千元ほどの収入になることも珍しくなかった。しかし夜間の潜水漁が広がるにつれ、過度な捕獲がサンゴ礁の魚群に深刻な影響を与えるようになった。ベテラン漁師たちも、この十年で漁獲量がすっかり減ったと語る。海の魚は年々少なくなり、かつてのように尽きることのない資源ではなくなった。緑島の海は、静かに警鐘を鳴らし始めている。

@eamon Mo

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ナポレオンフィッシュ事件がもたらした警鐘

緑島の海洋生態に社会の注目が集まるきっかけとなったのは、保護対象となる魚の密猟事件である。2016年、緑島の民宿経営者が魚槍でナポレオンフィッシュを捕獲した写真をSNSに投稿し、調査の結果、野生動物保育法違反として懲役六か月と三十万元の罰金が科された。ナポレオンフィッシュとカンムリブダイは、台湾で保護対象となっている数少ない硬骨魚類である。前者は絶滅危惧、後者は危急種に分類され、台湾海域で確認されたカンムリブダイは一時三十尾にも満たなかった。これらの事件は社会的な批判を呼び、漁の文化と生態保全の関係を改めて見つめ直す契機となった。

@underblue5

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@summer Hsia

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変化の兆し

長年の保全の取り組みにより、希望の兆しも見え始めている。2024年8月、研究チームは東沙環礁の海域で、およそ八十〜九十尾のカンムリブダイの群れを確認した。研究者にとっても、これほど大きな群れを見るのは初めての出来事だったという。緑島蘭嶼周辺でも、体長六十センチ未満の個体が複数確認され、成熟した個体を含む十数尾の群れが潜水者によって目撃されることもある。こうした状況は、保全政策が徐々に効果を発揮していることを示している。台東県政府も中央政府と連携し、海洋保護区の管理や取締りを進め、海の再生を促している。

@oc.divingboy

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@jamiechien

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魚を見る島へ

現在の緑島では、産業の重心が伝統的な漁業から観光と海洋教育へと移りつつある。かつて潜水漁を行っていた海人たちは、石朗や柴口といったダイビングエリアでは魚を捕らないよう配慮し、観光客が海中の色とりどりの魚を観察できる環境を守ってきた。異なる産業を尊重するこの姿勢は、島の転換の方向を示している。経験豊かな漁師たちも、緑島が観光の島へと発展していく流れを受け入れている。若い世代はダイビングガイドや自然解説に携わり、海の知識を旅の体験として伝えている。

@yoyo83818
@yoyo83818 (2)

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魚を海に残す価値

魚を捕る文化から守る文化へ。緑島の歩みは、魚を海に残すことの価値を示している。石朗の海で魚とともに泳ぎ、柴口の浅瀬でサンゴ礁の生態を間近に観察する。旅人が感じる驚きや感動の一つ一つが、海を守る力となる。緑島は単なるダイビングスポットでなく海洋教育を軸とする島へと変わりつつある場所であり、「魚を見る」という考え方が日常の中に根づき始めている。そして、かつて消えかけた魚たちの物語は、海を守るための新たな出発点となっている。

@184 Gaeng

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