紅頭嶼から蘭嶼への美しい転換
蘭嶼はかつて「紅頭嶼」と呼ばれていましたが、島の胡蝶蘭が国際展示会で際立った評価を受けたことから「蘭嶼」と改名され、この島の自然の誇りを象徴しています。面積約48平方キロメートルのこの熱帯雨林の島は、台湾で唯一熱帯雨林気候に属し、最高地点である紅頭山は標高548メートルです。学名に基づいた統計では、蘭嶼には65種類のラン科植物があり、そのうち34種類、すなわち半数以上が絶滅の危機に瀕しており、保全の緊急性が浮き彫りになっています。蘭嶼の独特な生態系と生物多様性は19世紀以来、多くの学者を惹きつけ、貴重な生物の宝庫となっています。

(写真提供:穗花杉網站)

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希少ランの秘密の生息地
「紅頭蘭」は紅頭の名を冠する貴重種で、冬季のみに開花し、強風と高波にさらされ人の訪れない高山の林冠層の枝に生息しています。特有のアーモンドの香りを放ち、約20センチメートルに達する花序には小さな花が密集しています。「雅美万代蘭」は台湾で唯一の万代蘭属植物で、1934年に初めて「Vanda lamellata(V. amiensis)」として発表され、「雅美の」という意味が込められています。
かつて蘭嶼南部の森林に繁茂していましたが、人為的な乱獲により40年近く姿を消し、2010年に林業試験所と屏東科技大学の調査により、蘭嶼南部の約100メートルの垂直崖の下で数十株の開花株が再発見されました。これらの希少種は人跡の及ばない環境に生育しており、その生態的地位が極めて脆弱かつ貴重であることを示しています。

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科学的復育という精密な工程
辜嚴倬雲植物保種センターは2018年5月より台電核能後端営運処と協力し、「紅頭蘭」「蘭嶼白及」「紅花石斛」「雅美万代蘭」の4種類の絶滅危機に瀕するランを選定し、復育作業を開始しました。復育過程は極めて複雑かつ精密で、ランは受粉から果莢成熟まで半年から1年を要し、その後は無菌播種され、培養瓶の中で苗が育つのを待ちます。苗は母瓶、中母瓶、子瓶と移し替えられ、無菌室だけでも何度も引越しが必要で、全過程は1年半から2年かかります。

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その後は温室に移し、自然光や湿度に適応させ、里子に出したりまたは野外復帰が可能になるまでにさらに2年以上かかります。保種センターのシニア収集マネージャー陳俊銘は、56種のランの完全な繁殖データを蓄積しており、これらの基礎情報は保全活動において極めて貴重です。

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分野を超えた協力による保全成果
「桃紅胡蝶蘭」は日本統治時代以来約80年間姿を消していましたが、2011年に小蘭嶼で再発見されました。しかし自家受粉ができないため、科学者たちは遺伝子の多様性を拡大するために他の子孫を探し出す必要がありました。国立自然科学博物館財団による「燦爛たる蘭嶼」プロジェクトの推進により、蘭嶼郷公所の使われていなかった宿舎と温室が研究基地として整備され、蘭恩基金会と協力して展示館も設立されました。これらの取り組みにより、ランは65種のラン科植物の保護を促進する親善大使となり、蘭嶼の生態再生に希望を灯しています。
現在までに保種センターは「紅花石斛」4,090株、「蘭嶼白及」751株、「雅美万代蘭」4,118株、「紅頭蘭」3,293株の繁殖に成功し、2,000株以上を台電蘭嶼貯蔵場に送り、現地気候への適応を進めています。また、里子活動を通じて1,370株が蘭嶼の個人、民宿、レストラン、バー、コミュニティ、公共機関や学校に提供されました。2022年9月、李家維教授は学者や専門家を率い、保種センターが保存していた200株のランをレストラン前のガジュマルの木に取り付け、蘭の真の「故郷への帰還」を実現しました。

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