台東の南東沖約33キロに位置する緑島。6月から10月にかけて、ここはダイビングの最盛期を迎えるだけでなく、オクシベンケイガニの大切な繁殖期でもあります。甲羅の幅はわずか2センチほど、両目の間に黄色い「眉毛」のような模様を持つこの小さな命は、普段は海岸林や内陸の二次林に身を潜めています。しかし、旧暦下旬の月が欠ける頃、卵を抱えた母ガニたちは潮の香りに誘われるように草むらや石の隙間から現れます。そして環島公道を越え、幼生を放つために海を目指してひた走るのです。石朗から亀湾にかけての路段は、彼らの主要な通り道。ここにはムラサキオカガニやナキスカシヤドカリ、さらには絶滅危惧種のヤシガニも姿を見せ、緑島を象徴する豊かな海陸の生態系を形作っています。

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(写真提供:@julianjuv

lucanidaeviva

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7万人の夏と8メートルの危険な道

緑島を訪れる観光客は、この10年で年間平均30万人を超えています。5月から10月は毎月3万人以上、夏休みのピーク時には月間7万人が押し寄せます。観光客のバイクが絶え間なく行き交う環島公道とカニたちの産卵ルートが重なった時、悲劇は起きました。2014年7月21日の早朝、地元の文史工作者が石朗付近で記録したのは、車にひかれ命を落とした2247匹ものオクシベンケイガニの姿でした。研究者によれば、ロードキルの圧力を長期的に受けている個体群には、体の小型化や性成熟の早期化といった異常が見られ、被害の激しい区間ではスウィンホーキノボリトカゲの個体数が通常の半分にまで激減しています。この道は、カニにとっての険路であるだけでなく、島全体の生態系が発する悲痛な警告でもあるのです。

台東緑島のカニ保護総動員 陸ガニとヤドカリの帰路を守る
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調査から寄り添う行動へ 「護蟹俠客」が道へ

現状を把握するため、特有生物研究保育センターは2020年より東部海岸国家風景区管理処の委託を受け、詳細な調査を開始しました。これまでに7科20種の陸ガニが記録され、新たに3種が緑島での新記録として追加されました。しかし、幼生放出のピーク時には、1回の調査で112匹ものロードキルが確認されることもあります。この事態を受け、東管処は「蟹蟹您的愛(カニへの愛をありがとう)~護蟹侠客行」を継続的に実施。2014年の試行時には延べ265人が集まり、民宿業者やダイビング講師、地元の師生、さらには観光客までもがバケツを手に駆けつけました。この2回だけで、4669匹の母ガニが無事に海へと送り届けられました。「カニを守ろう」というスローガンは、参加者たちの確かな足跡として道路に刻まれていったのです。

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台東緑島のカニ保護総動員 陸ガニとヤドカリの帰路を守る

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ヤドカリの家と袋に詰めて持ち帰る海岸のごみ

カニの保護と並行して、海岸の美化もまた、この小さな命たちの未来を左右します。台東県自然與人文学会は緑島に「ヤドカリ不動産」を設置しました。これは、ゴミである発泡スチロールやビンの蓋を「家」代わりに背負わざるを得ないオカヤドカリたちに、ふさわしい天然の貝殻を提供するための試みです。台東県政府と東管処が企画する「緑島エコ・スロートラベル」は、2026年5月1日から10月31日まで開催。過山古道の森林セラピー、護蟹侠客、ビーチクリーンという3つのテーマを繋ぎます。旅行者はビジターセンターで用具を受け取り、歩きながらゴミを拾うことで、砂浜を本来の清らかな姿へと戻していきます。速度を落とすハンドル、屈めて差し出された掌、そして持ち帰る一袋のゴミ。緑島の持続可能な未来は、こうした一人ひとりのささやかな行動によって、一歩ずつ築かれていくのです。

台東緑島のカニ保護総動員 陸ガニとヤドカリの帰路を守る

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