味覚で感じる台東の風情
近年、台東では珈琲文化が静かに芽生え、西洋のスタイルを取り入れるだけでなく、地域色豊かな「台東ブレンド」を生み出そうという動きが進んでいる。草月咖啡館は、台東特産のローゼル(洛神花)に着想を得て、甘酸っぱい風味と珈琲の苦味が絶妙に調和したローゼル珈琲を開発。清厚咖啡では、原住民の伝統香辛料である刺蔥(アイラントス・プリックリーアッシュ)を用いた刺蔥ラテが話題で、特有の香りと珈琲のコクが融合する一杯となっている。海玥咖啡では、シチリア風を取り入れた「晩崙西亞珈琲」を提供。甘さ控えめで奥行きある味わいが特徴だ。これらの創意工夫に富んだ「台東特調」は、地域文化の象徴として台東縣政府も積極的に推進している。

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(写真提供:力卡咖啡)

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部落文化と風土をつなぐ味わい
台東特調珈琲は、単なる味覚体験にとどまらず、地域文化への入り口でもある。力卡珈琲の馬告珈琲は、ブヌン族の「祝福と守護」の精神を象徴している。草月咖啡館のローゼル珈琲は、土地との結び付きがテーマで、2022年には「台湾で最も素晴らしい25の珈琲店」の一つに選ばれた。月間来店者数は2,000人を超え、そのうち40%は他地域からの訪問客だ。翠安儂風旅では、ローゼルを使った「ローゼルスパークリングアメリカーノ」を展開し、甘酸っぱさと珈琲の苦味が炭酸とともに広がる味わいは、まさに「深みのあるシチリア珈琲」。異国のものを真似ることなく、台東ならではの風味を打ち出している。

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一杯から始まる、台東の魅力発見
台東の風土珈琲は、台湾全体の珈琲文化を豊かにし、地域に新たな経済機会も生み出している。現在、台東には50軒を超える個性豊かな珈琲店があり、およそ300人の雇用を創出。その多くはUターンした若者による起業によって生まれている。台東を訪れる際は、草月咖啡館でローゼル珈琲の酸味と甘みを、清厚咖啡で刺蔥の爽やかさを、海玥咖啡で東海岸の夕日と晩崙西亞珈琲を、力卡珈琲で浜辺を眺めながら馬告ラテを味わってみてほしい。風土珈琲から広がる体験が、伝統と現代、自然と文化が共存する台東の新たな魅力を伝えてくれるはずだ。