花蓮から台東へと続く東海岸は海岸山脈と太平洋に抱かれた、まさに自然そのものが展覧会場となる場所です。交通部観光署・東部海岸国家風景区管理処が主催する「東海岸大地芸術祭」は2015年から始まり、2025年で11年目を迎えた。毎年夏至にあわせて開幕し、国内外のアーティストが都歴園区や沿線の風景区に滞在しながら創作を行い、波の音、岩礁、海風、光の移ろいまでも作品の一部となる。

(写真提供: 南迴芸術季)

(写真提供: 南迴芸術季)

(写真提供: 南迴芸術季)
稲穂の波に漂う「漂鳥197」の足跡
縦谷へ向かうと、「漂鳥197縦谷大地芸術季」が197号線全体をオープンギャラリーに変える。近年は「クラシックの再現」「子どもの遊び心」「サステナビリティ」をテーマに、ドイツ、アメリカ、フランス、韓国、南アフリカなど6か国・12組のアーティストが、鹿野・関山・池上・富里から玉里まで12点の作品を展示。果てしない稲田の中にそびえる作品もあれば、棚田の曲がり角、小さな集落の入口に静かに佇むものもある。さらに、策展チームはタゴールの詩集『漂鳥集』の詩句を作品の言葉に織り込み、旅人は歩きながら撮影しながら、縦谷に息づく文化の深みを読み取る。

(写真提供::縦谷大地芸術季)

(写真提供: 縦谷大地芸術季)

(写真提供:縦谷大地芸術季)
滞在制作から「歩いて学ぶ教室」へ
東海岸大地芸術祭の「滞在創作キャンプ」や、南迴芸術季が企画する5つの文化ウォークは、短期イベントにとどまらず、アーティストが地域と共に暮らし、学び、創るプロセスそのものを重視する。アーティストは部落に滞在し、長老や若者、子どもたちと共に作業し、海洋漂着物の収集、森の踏査、木彫やガラス珠の手仕事を通して生活の経験を作品に昇華する。一方、ウォークイベントに参加する旅人は、ガイドの解説や風土の食卓を通して、作品の背景にある地名の物語やその地で暮らしてきた人々の記憶を深く理解し、山と海を横断する共学ネットワークを形づくる。

(写真提供: 南迴芸術季)
「大台東美術館」という文化実験場
観光署・東管処と地域コミュニティの協力のもと、台東県政府は「大台東美術館」というキュレーションの概念を掲げ、東海岸大地芸術祭、南迴芸術季、縦谷の漂鳥197をつなぎ合わせ、さらにスローフードフェスティバル、クリエイティブ市集、アートプラットフォームなどを組み込み、宿泊パックやシャトルバス路線も連動させている。芸術祭を単なる季節イベントに終わらせず、年間を通して体験できる「暮らしのスタイル」として位置づけているのが特徴だ。壁も、単一の建物の境界も存在しない。海岸から稲田へ、集落から市街へ――台東全体が創作を続ける「壁なき美術館」そのものとなっている。

(写真提供: 南迴芸術季)



