






3つのポイント
- 台東の部落の年配者は、ベニバナボロギク、山ゴーヤ、假酸漿などの本草植物を集落の周りで育て、季節と暮らしの経験に従って摘み取り、日々の健康を支える料理にしてきました。
- 2020年から台東県政府と国立台東大学は、16か所の文化健康ステーションで100人の長老に聞き取りを行い、50種類の伝統植物の見分け方と使い方を記録して一冊の本にまとめました。
- 関山鎮の電光部落では、台東区農業改良場の指導のもと保種園を設けています。旅行者はアミ族の酒造り体験や農村ガイドツアーを通じて、部落の伝統食材を知ることができます。
菜園のそばに育つ健康食材

部落の野草の多くは、わざわざ植えなくても、季節に合わせて山林や川辺、田畑のあいだに育ちます。ベニバナボロギク、山ゴーヤ、假酸漿といった植物は昔から集落の周りに植えられ、人々は摘んで料理に使い、日々の健康を支える食材としてきました。どこで、いつ摘み、どう見分けるか――年配者はそのすべてを長年の暮らしの経験から身につけています。
台東の部落の年配者は、本草植物をどう日々の食事に取り入れているのか?

年配者は体調に合わせて植物を選び、そのまま食べたり、スープにしたり、お茶として煎じたりします。たとえば次のような使い方です。
- アカギの葉:アミ族の人々は、飲酒後に下痢や嘔吐があるとアカギの葉で不調を和らげます。
- オオバギの葉:プユマ族の利嘉部落では、ご飯にかぶせたりおにぎりを包んだりするのに使い、口内炎ができたときは樹皮をあぶってかさぶたを促します。
- カナビキボクの葉:利嘉部落では、ゆでた葉に歯磨きのような効果があり、「原住民の歯磨き菜」と呼ばれています。
- タイワンニンジンボク:建和部落では生葉と乾燥葉の両方が使われ、黄荊を使った特製の紅茶も作られています。
摘み取りにも作法があります。南竹湖部落の長老は、母が菜園に halana’(長花九頭獅子草)を植えていたことを覚えています。体調を崩したときには摘んで食べたりスープにしたりしましたが、摘む前には必ず植物のそばに米をひとつかみまいたそうです。それは大地との交換であり、感謝のしるしでした。

同じ葉でも、家ごとに食べ方はさまざま

こうした使い方に統一された決まりはありません。グァバの葉はほぼすべての民族に共通する記憶で、若葉に塩をつけて食べるアミ族の長老もいれば、お茶にする人もいます。呼び名も土地によって異なり、パイワン族では太麻里渓と大竹篙渓の流域で同じ植物の名前が違うことがあります。

同じアミ族の南竹湖と比西里岸でも、ひとつの植物にそれぞれ別の呼び名があるほどです。こうした知識の多くは文字に残されず、年配者の口伝えだけで受け継がれてきました。暮らし方の変化とともに、植物の知識や採集の文化は少しずつ日常から離れつつあります。
部落の植物の知識は、台東でどのように記録されているのか?

台東県政府と国立台東大学は2020年から協力し、16か所の部落文化健康ステーションを訪れて100人の長老に聞き取りを行い、50種類の伝統植物の見分け方と使い方を記録してきました。聞き取りでは介護スタッフが、誰から教わったのか、どこで摘んだのか、子どもに伝えたかを重ねて尋ね、断片的な使い方を一つの文脈としてつなぎ合わせました。チームは最初に集めた98種類から50種類を選び、2026年に『原來,你醫植都在』(「ずっとそこにいた」と「医の植物」を掛けた書名)を出版。各部落の民族語による呼び名と表記も収録しています。近年、見た目の似た植物を誤って食べて中毒を起こす例が相次いでいることから、本の写真と部落の人々の経験は、一般の人が植物を正しく見分ける助けにもなります。本は全国の主要図書館や先住民関連機関に寄贈される予定です。
保種園からお弁当まで

文字は知識を残しますが、植物そのものも誰かが植え続けなければなりません。関山鎮の電光部落はアミ族が中心で、今も素朴な農村の姿をとどめています。台東区農業改良場は近年ここで保種園の設立を支援し、継承が途絶える恐れのある特色ある作物を集め、苗を育てて植え付け、保存しています。その中には、山素英、過山香、大風草など、酒麹づくりに使う植物も含まれています。改良場は同じ栽培・保種の技術を、2024年に始めた「部落行動学堂」シリーズ講座を通じて部落の人々にも伝えており、長光文化健康ステーションでの講座には多くの受講者が集まりました。部落の食材は旅行者の食卓にも届いています。改良場の指導のもと、電光部落の「宝媽食堂」は梅、シラウ(アミ族の塩漬け豚肉)、車輪茄(在来ナス)を使った素朴なお弁当を開発。アミ族の酒造り体験や農村ガイドツアーと組み合わせ、旅行者を保種園へ案内して伝統食材を紹介しています。部落の「雷公火文化生活祭」のマーケットにも、多くの旅行者が訪れています。



