
民間が灯した火種
「スローエコノミー」は、計画によって一気に作られたものではなく、地域に生きる人々一人ひとりの営みからゆっくりと育まれてきたものです。長年、子どもたちに太平洋の大自然を伝えてきた海洋教育の先駆者は「海の学校」を提案し、砂浜や岩礁、潮間帯で培った学びをより多くの人々が海を深く知るための実践的な行動へと整理しました。また、都蘭部落に深く根ざす地元の仲間たちは、「都蘭スロー旅ガイド」を制作し、部落が本来持つゆったりとした旅のリズムを、誰もが手に取り、未来へ読み継いでいけるガイドへと形にしました。EXPOの内容は、文化、レジリエンス、環境、そして社会システムにまで及びます。これは、急ごしらえで民間の人々を展示会場へ動員したものではありません。それぞれの郷鎮に散らばり、もともと自發的に起きていた日常の営みに「共通の舞台」を設け、この土地が長年蓄えてきた深い底力をより多くの人々に届けるための試みなのです。




スクエア・スクエアでは、10基のコンテナを積み重ねて構築された「微光流金シアター」が、「漂泊と奮闘」をコアテーマに掲げています。メインビジュアルは、台東県民の身分証ナンバーに刻まれたアルファベット「V」に呼応し、故郷を離れた人、Uターンした人、そして「東漂(台東への移住)」を選んだ若者たちのエモーショナルな人生経験に焦点を当てています。この企画の背景には、1年に及ぶ丁寧なフィールドワークがありました。屋外の露天キネマでは、鄭治明監督が手がけた映像が上映されます。スクリーンに映し出されるのは、国宝級の伝統工芸大師である陳利友妹氏、出版人の林載爵氏、東漂青年の小飛氏の3人です。これら「三筋の光」が、異なる世代を生きる台東の人々の情熱的な歩みを照らし出します。

展示場の外に広がる、文学の香り
旧駅特区を一歩出れば、この街全体こそが真の展示会場です。台東県立図書館の「台東探索館」では、没入型の空間演出によって台東の時空、文学、音楽、そして祭儀の物語を幾層にも紐解きます。台東美術館の「環太平洋国際レジデンス交流展」では、海の向こうから招かれたアーティストたちが、原住民族の叡智と環境の共生について語り合います。就藝会の「オーストロネシア文化リビングルーム」では、フォーラムや音楽、アーティスト・イン・レジデンスを通じて、島々の対話をさらに世界へと広げていきます。街のあらゆる片隅が、それぞれの方法でこの盛典に応えているのです。


終わりのない現在進行形
これは閉幕のないイベントである。一つひとつの展示や公演、交わされる対話、そして新たに台東へ足を下ろす若者の存在が、この進行形の次の「今」となる。エキスポは山と海を日常に書き込み、一粒の種から一年を通したリズムへと育てていく。人々が「生きる学校」を歩き、「記憶抽出所」に立ち止まり、「微光流金シアター」の屋外上映に腰を下ろすとき、「スロー」とは単に速度を落とすことではなく、暮らしをより深く生きる方法なのだと気づくだろう。そしてその深さこそが、台東が世界を招き入れる理由である。

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2026年台東EXPO
𝗦𝗟𝗢𝗪 𝗙𝗢𝗥 𝗟𝗜𝗙𝗘 |07.03 金曜 から 08.20 木曜
@2026年台東EXPO



