阿粨(アバイ)は、台東に暮らすパイワン族、ルカイ族、プユマ族などの原住民族にとって重要な伝統料理である。豊年祭や収穫祭、婚礼などの祝い事には欠かせない料理で、豚肉、檳榔、酒とともに「豊年祭の四宝」として知られている。阿粨は、アワまたはもち米に豚肉の具を合わせ、まず假酸漿の葉で包み、その外側を湯通しして柔らかくした月桃の葉で包む。綿のひもで結んだ後、蒸して仕上げる。竹の葉を使う漢民族の粽とは異なり、假酸漿の葉は蒸すことで米粒にやさしく付着し、葉ごと食べることで独特の香りと豊かな食感が楽しめる。

粨發粨粽

(写真提供:@abai_taitung)

土地から生まれる多彩な味

假酸漿の葉は部落で日常的に食べられてきた野菜でもある。食物繊維が豊富でクロロフィルを多く含み、昔は食材を包んで保存性を高めるためにも使われてきた。天然のラップのような役割を果たし、狩猟の際に食料を保つ生活の知恵でもあった。阿粨の主な材料であるアワはグルテンを含まず消化しやすい。ビタミンB群、ビタミンE、カルシウム、リン、鉄分などの栄養素も豊富で、幅広い年齢層に適している。部落や生活環境の違いによって、阿粨にはさまざまなバリエーションが生まれた。タロイモ粉や紫米、赤キヌアを使ったものなどもあり、日常の食卓から祭りの分かち合いまで、土地への感謝と家族の絆を象徴する料理となっている。

粨發粨粽

(写真提供:@abai_taitung)

Sticky Rice Dumpling

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粨發粨粽 (3)

(写真提供:@abai_taitung)

阿粨が都市の暮らしへ

近年、台東県政府は原住民族の食文化の発信に力を入れている。2025年の端午節には、Taitung Wave Houseで「粽浪台東・百味伝芸」というイベントが開催された。原住民族の食文化、親子体験、部落の物語を組み合わせた催しである。展示案内や手作り体験、限定料理などを通して、来場者は味覚と体験の両方から部落文化に触れることができる。イベントでは達魯瑪克部落のブランド「粨發粨粽」が体験工房を担当し、葉の選び方から具材の準備、包み方まで阿粨作りの工程を紹介した。

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(Photo credit: @abai_taitung)

一枚の葉が支える部落

台東市更生路にある「粨發粨粽阿粨専売店」は、創業者の王禛壹と夫の弗納柳によって2018年に設立された。地方創生を理念に、部落の女性たちが手作業で阿粨を作っている。店内には透明の作業スペースが設けられ、葉の選別、具材の準備、包み、ひもで結ぶ工程までを来店者が見ることができる。2022年の端午節には、粨發粨粽の商品がPXマート(全聯)で販売され、人気商品となった。これは原住民族の食材加工における大きな節目となった。食材の活用にも工夫がある。嘉蘭部落で契約栽培された假酸漿の葉を使用し、きれいな葉は阿粨を包むために使い、傷んだ葉は餃子の具や葉の焼き料理に、古い葉は健康茶の粉として再利用される。こうして循環型の地域経済が生まれている。

Abai

(写真提供:min_mindy_mindy)

粨發粨粽 (4)
粨發粨粽

(Photo credit: @abai_taitung)

伝統の精神を未来へ

粨發粨粽が届けているのは単なる食べのもとしての阿粨でなく、原住民族文化を伝えることも大切な使命としている。チームは「霹靂嬌娃」と名乗り、部落の女性たちを連れて展示会や販売イベントに参加し、雇用と自信の機会を広げている。卸売から直営店舗へと活動の場を広げながら、来店者との対話を大切にしている。旅人が月桃の香りと小米のやさしい食感を味わうとき、その一口には部落から届く温かな物語が込められている。