卑南郷は台東市に隣接し、交通の便と自然資源に恵まれた地域です。広大な草原とホルスタイン牛で有名な初鹿牧場は、親子で楽しめるアウトドアスポットとして人気です。知本温泉は上質なアルカリ性炭酸泉として知られ、森林公園や白玉瀑布などの観光地と組み合わせることで、心と体を癒す最高のリラクゼーション空間となっています。利吉悪地や小黄山の特異な地形は、地質研究や生態観察に最適なスポットです。また、富山杉原護魚区では潮間帯の生態系がよく保たれており、遊歩道を通じて海の生き物を間近で観察することができます。郷内には多くの部落が点在しており、春になると桜や杏の花が咲き誇り、山林の自然美と文化が調和し、卑南独自の生命力を感じさせてくれます。

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卑南という名称は卑南語の「Puma」(尊称)に由来し、19世紀に卓越した知恵で部落を治め、制度を築き、一時は台東縦谷全体を支配した大頭目ピナラ(Pinara)を記念するものです。卑南語の「Punuyuma」は「集中・団結」を意味し、のちに族名「プユマ(Puyuma)」となり、結束力と自主精神を象徴する言葉となりました。

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清代以降、卑南は何度も行政区画の変遷を経てきました。清朝時代の卑南廳、日本統治時代の卑南庄役場、そして戦後の卑南郷設置へと続きます。しかし、現在の行政区域としての「卑南」は卑南郷内にはなく、台東市に位置しており、台湾の地名変遷における特異な事例となっています。

(Photo credit: @fairytsai_)
郷内は民族の融合が深く進んでおり、ブヌン族やプユマ族をはじめとする原住民族、さらに初期漢人移民の痕跡も残されています。この地には集落の物語、言語の継承、地域信仰などに民族の記憶と多文化的な背景が息づき、台東の文化的多様性を理解する重要な窓口となっています。



