台東県は豊富な自然資源を有しており、中でも湿地生態系は貴重な宝であると言えるで
台東県は豊富な自然資源を有しており、中でも湿地生態系は貴重な宝であると言えるでしょう。近年台東県政府は積極的に湿地保全を推進し大きな成果をあげています。県政府は今年内政部の《国際的及び国家的に重要な湿地管理》で特別優良賞を受賞し、台東の湿地保全において傑出した成果を出したことが認められました。
池上大坡池濕地
現在、台東には五つの国家的に重要な湿地があり、その総面積は300ヘクタールを超え、それぞれの湿地は独自の文化的価値を有しています。「池上大坡池濕地」は45ヘクタールの面積を有する台湾で唯一の断層によって形成された内陸湿地で、重要な生態系の生息地であると共にレジャースポットとしても機能しています。「海端鄉新武呂溪濕地」は多様な生物達の生息地で面積は317ヘクタールに及び、ブヌン族の重要な生活拠点でもあります。「卑南溪口濕地」は911ヘクタールという広大な敷地面積を有しており、野鳥等多くの野生生物の重要な住処になっています。
また「大武山大鬼湖濕地」と「小鬼湖濕地」、前者は台湾で最も深さのある高山湖泊として豊富な生態資源を有しており、後者は人の手によって開発されていない広葉樹林と絶滅の危機に瀕している台湾杉の純林があるルカイ族の聖地として知られています。これらの湿地は貴重な生態資源を保護すると同時に豊かな文化遺産の保存もしてくれています。県政府はラムサール条約を守って地域社会と協力し合いながらこの貴重な資源遺産の保護を行なっています。
小鬼湖濕地
(写真提供: IG@justin_chen_1020)
台東は自然湿地だけではなく人口湿地の保全に関しても大きな成果をもたらしています。太平溪の左岸に位置する面積約1.73ヘクタールの太平溪人口湿地は自然生態工学に基づいた汚水処理を行なっており、2014年の利用開始以来、毎日2,400トンの汚水が処理され、水質の改善により多くの野生動植物達の住処となっています。環保局の観測によると、湿地内に生息していた野鳥類は24種から33種に増え、2021年時337匹だった野鳥数は2023年には386匹まで増加した事が確認されています。冬になるとサギ科の野鳥やキンクロハジロ、ハシビロガモ、コアジサシ等の野鳥が訪れている事からもこの地域の生物達の多様性が示されています。
他にも保全対策の成功例である鹿野郷にある新良排水人口湿地は、この地域の汚水問題が解決されたのみならず生態保全、環境教育、レジャー機能を兼ね備えた公園として親しまれています。県政府は流木を堤防保護の基礎材料として利用するという新たな設計理念を取り入れた事でセメントの量を減らし、エネルギーを削減すると共に炭素排出量の削減にも貢献しました。
(写真提供:IG@tintinghi)
台東県政府は長期的な湿地保全を行うには教育から始める必要があることを認識しており、積極的な湿地環境教育を推進しています。環保局は定期的に太平溪と關山鎮にある人工湿地で解説付きのガイドツアーを開催しており、2023年8月に開催されたガイドツアーではプロの講師による湿地の汚水処理方法と生態観察に関する解説が行われ、参加者は湿地の機能とこの場所で暮らしている鳥類達の生態について学ぶ事ができました。
さらに一歩進んだ湿地保全を行う為、環保局は湿地で水遊びをしないように、そしてゴミの持ち帰りを行うようにと呼びかけております。他にも県政府は「太麻里溪の小燕鷗(コアジサシ)保育所を訪れよう」等のイベントを開催することで生態調査への参加を促し、湿地保全に対する市民の意識を高めています。
こうした取り組みは国連の持続可能な開発目標(SDGs)第6項目「安全な水とトイレを世界中に」と第15項目「陸の豊かさも守ろう」に呼応しており、台東県が世界の持続可能な開発の流れにおいて積極的にその役割を果たしていることを示しています。多角的な教育活動と保護活動により湿地保全は台東で暮らす人々の日常の一部として機能しており、環境保護の持続可能な発展はこれからも推進されてゆきます。
台東市内にある知本溪口濕地はまだ国家的な湿地としては認定されていませんが、豊富な生態系を有しており、近年では地域住民が原生植物を復活させて湿地で暮らす生物達の多様性を回復させようと積極的な行動を行なっています。地元壮年会のリーダー・高明智は過去行われた大規模な開墾により損なわれた生態系を復活させる為、現在は観察と回復に向けた作業が行われており、徐々に以前のような自然生態系を取り戻せるよう行動していると述べた。
(写真提供:IG@nini_dialy_life)
(写真提供:IG@nini_dialy_life)
台東県政府は未来に向けて湿地保全を引き続き推進して環境教育を続けてゆきます。今後は湿地の生態調査範囲を拡大してより完璧なデータベースを構築すると共に学術機関との協力関係を強化して湿地の回復に関連する研究を進め、あらゆる年齢層が参加できる多様な教育プログラムを開発することにより地域社会と政府が協力して湿地保全を行う持続可能な開発を実現しようとする長期的な計画となっています。