Taitung Times Vol.04.2023
実り多き町・台東

台東といえば農業と観光で名を知られている県であり、特にバンレイシ(釈迦頭)とアテモヤ(パイナップル釈迦頭)は台東を代表する果物として有名です。およそ2800へクタールの土地がアテモヤ栽培に使われ、年間生産量約2万トンほどあり、生産量全体の95パーセントが輸出品として栽培されてきたアテモヤですが、2年前(2021年)に中国がさまざまな台湾産の農産品を禁輸する内の一つとしてリストアップされ、台東のアテモヤ農家は多大なダメージを覆うことになりました。

しかし台東県政府はめげずに努力を重ね、饒慶鈴県長の度重なる試みや中国との交渉などに励み、638日の月日を超えやっとまた輸出することが可能になりました。もっと詳しく言うと、県庁をはじめとする県政府・台東大学・そして農家の産官学による協力の結果が実ったのです。

クオリティへの追求は果てしなく

輸出の再開を図りクオリティが必要な基準を満たしていることを確認するため、台東県政府は新たなルールを包装工場に下し、新たな規制を改定・実施しました。例えば包装工場の清潔面をさらに要求し、果物が最高の品質であることを保証することに焦点を当てています。また、国立台東大学と協力して、サプライチェーン全体の品質管理を改善することにも力を入れ、包装工場のオペレーターに研修を提供しています。

中国へのアテモヤ輸出の再開は台東県にとって重要な一歩であり、さらに台湾の他の果物が中国へ輸出再開される道が切り開かれることが期待されています。台東県政府は引き続き関係当局と緻密に協力し、最高のクオリティと安全性が維持され、これからも台東の農家を見守っていきます。

アテモヤとは?

釈迦頭という別名で親しまれているバンレイシ、中米原産・世界中の熱帯域で広く栽培されている果物です。このバンレイシとチェリモヤを掛け合わせて作出された交雑品種こそ台湾台東の名産、いわゆる「パイナップル釈迦頭・アテモヤ」で、一般的に知れ渡っている台東で栽培されているバンレイシのほとんどはこの品種に属しています。1908年にアメリカ・フロリダ州で作出され、台東以外にアメリカ・イスラエル・南アフリカ・フィリピン・オーストラリアなどで栽培されておりますが、台湾は世界最大の栽培国であり、台東県こそ主な栽培地であります。

アテモヤはハート型または丸みを帯びた外観をしており、淡い緑色で傷つきやすく、皮はでこぼこしています。食感はバンレイシのようにシャリシャリしていなく、どちらかと言うとチェリモヤの果肉とより類似しています。とてもジューシーで滑らかで、ほんのり甘くて少し酸っぱみも感じ、バニラのような香りを帯びています。

そして品質への拘りにより、台東の農家は果物がそれぞれ完全に成長することを保証する人工受粉を行なっています。台東産のアテモヤは大きくて完璧な外観により見た目も良く、その上貯蔵寿命も長いため、中国、シンガポール、カナダなどの国際市場で非常に人気があります。

クオリティへの追求は果てしなく

こんなに恵まれた自然環境や温暖な気候を有する台東にはアテモヤだけでなく、さまざまな種類の果物が栽培されています。ここからは他の果物について紹介したいと思います。

お正月にはお節料理がつきもののように、台湾の中秋節といえば文旦(ブンタン、ザボン)です。台東県東河郷と池上郷は気候と土壌が栽培にとても向いており、こちらで生産されるザボンの果実は繊細でジューシーな食感を持ち、多くの人々より愛されています。
それ以外に晩白柚(バンペイユ、大白柚)も栽培されており、文旦の後をおって旬を迎えます。果実は約2〜3 kgでとても大きくビタミンCがとても豊富で、果物は甘酸っぱい味があり、美容志向の方に人気があります。

南果とも呼ばれる波羅蜜はインド原産の果物で、典型的なトロピカルフルーツです。台東の太麻里郷と東河郷は気候がこの果物に向いており、栽培に適しています。果実は独特の風味があり、果肉、種子など、皮以外すべて食べることができます。

関山鎮を代表する品種のオレンジとして知られるバレンシアは、1800年代にカリフォルニアで生まれたスイートオレンジです。台東のバレンシアの主な分布地域は、関山・成功・東河で、収穫期は3月から4月です。14ヶ月と長い成長期間のため、バレンシアは高い甘さと強い香りを持っています。物は甘酸っぱい味があり、美容志向の方に人気があります。

サマースノーマンゴーは台湾地元の金煌(キンコウ)マンゴーとアルフォンソマンゴーの交配種である新しいマンゴー品種です。豊かな香り、繊細な果肉、そして高い糖度を持ち、マンゴー愛好家の間でとても人気です。高雄農業改良所によって開発され、栽培に10年以上かかりました。果樹を植えてから実際に生産するまで3年かかり、新たな品種のためまだ供給が限られておりとてもレアで、収穫期は5月から7月下旬になります。

美味しい、きれい、正しい

台東が誇る農産物、その品質・鮮度・そして味の秘密は何でしょうか?台東の手つかずの環境によるものと考えるかもしれませんが、最高な土地などに恵まれても適切な管理がなければその価値をさらに引き出すことはできません。こうした背景から、台東県政府は環境に優しい有機農業を積極的に推進しているのです。実際に、この地の手つかずの自然を保護し維持することは、県長饒慶鈴氏が提唱する『スローエコノミー』の信念であり、持続可能な成長を促進するためにも不可欠です。

台東県の農家が直面している課題には、近隣の畑からの汚染、有機製品加工の認証取得、スマート農業技術の導入、そして国際市場との連携を強化して競争力を向上などとあります。政府は県内の環境にやさしい有機農業を支援し促進するための政策を実施しており、これらの政策には資源カウンセリング、有機認証料の補助金、全額補助金、メートルトンあたり1万円の有機肥料補助金、農業機械の共同使用のための半額補助金と個人使用のための3分の1の補助金、そして学校への有機米と野菜の供給が含まれます。

これらの政策は効果が著しく、2019年時点での有機農業の面積は672ヘクタールでしたが、2023年2月までには1242ヘクタールまでに増加しました。同様に、環境に優しい農業の面積も2019年の667ヘクタールから2023年初頭には1141ヘクタールに成長しています。他にも教育セミナーや有機農業の展示会、販売イベントなどを通じて環境に優しい有機農業を積極的に推進しており、2021年だけでも有機農業の促進を目的とした26のイベントが開催されました。補助金に関して、県政府は環境に優しい有機農業の実践を支援するためにヘクタールあたり11万円の補助金を提供しています。有機農業への移行を促進するために、ヘクタールあたり年間22万〜28万円の補助金も3年間の制限付きで提供されています。

課題はまだありますが、政府の支援と農家の献身によって、台東県での有機的で環境に優しい農業が成長し続けることが明らかになっています。

 

明るい未来への険しき道のり

まとめると、台東県は農業の多様性に富んだ地域であり、その好条件の気候下でさまざまなフルーツや農産品が育つ天国です。もちろん成功への道はすべて順調だったわけではなく、台東の農業部門にもさまざまな課題がありました。しかし、台東の農家は県政府のサポートを受けながら、度々危機をチャンスに変えることができました。これにより、台東の一次産業は幅広い改革を遂げ、例えば農産物のランク付けによって、品質管理とさまざまな市場への商品の差別化が可能になりました。今では最高品質の農産物は国際市場に輸出され、新鮮な果物として販売されます。次のランクの品物は国内の生鮮市場で販売され、その他の商品は食品加工用にまわります。この一次産業、二次産業、三次産業のシームレスな繋がりが台東の経済競争力を向上させ、農家の収入を増やすことにつながっています。

アテモヤの滑らかな風味、サマースノーマンゴーの芳醇な香り、熟したブンタンの甘酸っぱい味など、台東の農家によって自然に育てられ、丹精込めて育てられたフルーツの味わいは台湾で最も熟練した農家たちによって提供されています。美味しい地元のフルーツを堪能することは、まさに台東のスローエコノミーの価値を会得する最高の方法であります。

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