taitung-times-2023-04-ja
Taitung Times Vol.02.2023
デジタル化の先駆け:台東
急がば回れ、これぞ勝利への道

イソップ寓話で知られるウサギとカメの話では自分のスピードに自信過剰なウサギに対し、のろのろとしたカメが勝利を収めるお話し。この王道な物語こそ、台東県の饒知事が掲げる「スローエコノミー」の最も有力な比喩となっており、いかに最もスマートで無駄のないやり方で課題を達成できることが長期的な成功の伴を握るという考え方です。当県のスマホアプリTTPush(TTは台東の略)は、このまるで太極拳のような哲学の具現化と言えるでしょう。このオールインワンのアプリは、ユーザーが利用可能なサービスの範囲を拡大し、独自のTTCoinsという報酬システムを通じて県民がフィードバックを共有することを提案しています。

指先一つで電子政府にアクセス

TTCoins は、ブロックチェーンをもととする暗号通貨とは異なり、ポイントシステムに近いものであるため、現時点で台湾元やその他の通 貨で直接 TTCoins を購入する方法はありません。では、どのようにしてユーザーは TTCoinsを獲得することができるのでしょうか?簡単に言うと、アプリとのやり取りになります。例えば、アプリをダウンロードしてユーザー登録するだけで 20 枚のコインがもらえ、友達とアプリを共有することでまた同じ枚数がもらえます。

さらにアプリ内で行われる沢山の「TTCoinキャンペーン」に参加することでもっとコインを手にすることができます。これらは特定のテーマに関する小さな記事と、それに関連する多肢選択問題から構成され、問題に正解するればコインを報酬として受け取ることができ、返答回数は 3 回ほど与えられます。

アンケートが苦手な方、スマホを常時手にすることができない方には、他にもTTCoinを手にいれる方法があります。一つの例として、台東市内に設置されている電池リサイクルマシーンであなた専属の QR コードをスキャンして電池をリサイクルすると、電池によって 5~10 枚のコインを手にいれることができます。

また、台東県政府は毎年「東岸舖食節」を開催し、グルメやエンタメ愛好家にとって一番の目的地となっています。この祭りでは、美味しいおやつを楽しんだり、最新のデジタル体験に興じたりすることができます。2022年のイベントでは、最初に登録された2000人がそれぞれ 200枚のTTCoinsをもらい、TTPushのSNSファンページをフォローして共有するとさらに 500 枚、自分の食器を持参するか TTFree Wi-Fi に接続するとまた300枚、その場で使える電子マネーとして TTCoins がそれぞれ加算され、祭りの屋台で提供されるお菓子や料理に思う存分使うことができます。

このイベントで使う以外にも、もちろん他にTTCoinsを使う方法はたくさんあります。TTPushのメイン機能として「ディスカウントマップ」があり、その名が示す通り、台東県の地図に数え切れないほどのピンクのフラグが散りばめられ、まさに至る所で TTCoin を使うことができると言っても過言ではないでしょう。

各フラグはアプリと提携する地元の店舗や企業を表しており、それぞれクリックするとポップアップが表示され、そこで提供されるサービスなどを紹介し、10 枚からの TT コインと引き換えに利用できる店内の割引などの情報を得られます。 TTPushのユーザー数はすでに台東県民の 50%以上という数を上回り、地元企業はディスカウントマップの列に入ることを熱望しており、このアプリは消費者を提携企業と結びつけ、地元経済を活性化させる究極のマッ

チメイカーとなっています。ディスカウントマップは台東の美しさを探索しながらお得な買い物をすることができる最高のツール、ビジネスにとっては新規顧客を獲得し、売上を増やす完璧な方法であります。

TTコインを使ってお土産や地元物産をオンラインで予約購入し、ホテルや駅で受け取ることもできます。このサービスにより、友人や親戚のためのお土産を買うためにバタバタする必要もなく、貴重な旅の時間を美しいビーチや温泉で過ごすことができます。さらに台東でドライブする予定のある方にとっては、便利なライフハックもあります。TTPush に自分のナンバープレートを登録し、駐車料金をTTコインで直接支払うことができ、駐車料金をTT コインウォレットから自動的に引き落とすこともできます。自動引き落としを申請するには「メンバーサービス」から「駐車券の検索と支払い」に移動して申請してください。利便性の高さがとても人気で、これまでに台湾元 100 万元以上の駐車料金が TT コインで支払われています。

便利でかつ有効的なソリューション

TTPushは利用者にとって便利なだけでなく、行政にとっても「スローエコノミー」を実現するための中心的な役割を果たしています。多岐にわたるサービスを同じプラットフォーム上で効率的に処理し、TT コインという魅力的なインセンティブで、県民の半数以上をアプリに集めることで、TTPushは毎日行政に多額の節約をもたらしています。

実際の計算によると TTPush は今までに台湾元 4 億元以上もの膨大な金額が節約されており、主にマーケティング、新たな制作のPR、廃棄物処理コストが削減されたことによるものです。もちろんこの数字には他にも削減された隠れコストや、肯定的な経済活動が社会や環境全体に与える間接的な影響、すなわち外部効果は含まれていません。

TTPush の場合、この外部効果の素晴らしい例として、健康予防キャンペーンです。アプリに登録された県民は、乳がんのリスクがある人々を中心に予防検査を受けるよう促されました。5000人以上の県民が検査を受け、500件以上の早期発見がなされ、多くの方の命や時間、お金、無駄な苦痛が救われました。さらにこのアプリには新しい機能がどんどん追加されていきます。楽しいものから便利なものまで、毎年さまざまな機能がTTPushに加えられ、ユーザーたちは目が離せない状態になっています。特に注目すべき機能の一つが、全国的な「Coinex」システムの導入です。現時点で、台湾では雲林だけが TTPush と類似したプロジェクトを実行しており、もし雲林を訪れる予定がある場合は、TTCoinsを雲林コインに換金して様々なサービスを受けることができます。今後は台湾全土でTTCoinsをご当地コインに換金できるようになる日がくるかもしれません。

ここまでご覧いただき、TTPushがスマートかつトレンディーであり、そしてエコでソーシャルフレンドリーであることについて、皆様も思うのではないでしょうか。これは台東のスロー・エコノミーが実践されている具体的で持続可能な例です。ただ、台東県政府が「一発屋」であると考えるのは誤りです。当県では多くの分野でデジタル化と効率化を展開させており、TTPush に加えてもう 1 つ重要な分野があります。それは、県全体の「デジタル・ツイン」の作成です。

デジタルバージョンの二重身

ドッペルゲンガーとは生物学的に関係のない見た目が似ているものや双子を指すことが多いですが、ホラーや犯罪映画などでもよく使われる要素であります。しかし実生活では、「デジタルなドッペルゲンガー」または「双子」は、スマートシティの構築に欠かせない要素であります。台東県政府は基本的な地理データを包括的なデジタルデータベースに統合するために、デジタル化の採用を加速し、統治と行政の効率化に向けて精力的に取り組んでいます。

2022年秋に緑島の高解像度3Dモデルである「デジタル・ツイン」が発表され、発表イベントでは政府が取り組んできた成果が展示され、島の高解像度地形モデルや3Dビジュアライゼーションが披露されました。当時から既に蘭嶼や緑島の基本データと地図をデジタル化を開始しており、スマートシティの実現に向けてこのプロセスを継続してきました。また発表イベントでは、遠隔地や立ち入りが困難な場所からデータを収集する重要な役割を果たす無人航空機(UAV)部隊の発表もありました。

このプロジェクトは市内と地方、特に離島地域の間のデジタル格差を埋めることを目指し、地形的な障害、不十分なインフラ、基本的な公共サービスの不足などによって長年にわたって開発が妨げられてきた地域において、重要なマイルストーンでもあります。

台東県のデジタル・ツイン計画は、航空写真やレーザースキャンなどの最新技術を活用して、政府機関・企業・一般県民が利用できる高解像度・高品質のデジタル地図を作成することを目的としています。県内の地理データを正確かつ包括的に把握することによって、より良い地域・都市計画、持続可能で適切な土地利用、共有資源の保護、景観の保存・維持などが実現され、さらにコストや労力の削減にもつながります。このプロジェクトは、機能的かつ美しいスマートシティの実現に向けた重要な一歩なのです。

夢を見ながら堅実に歩む

総じて言えるのは、TTPushのようなスーパーアプリや地形の非常に精密なバーチャルレンダリングを含め、台東県政府は台湾の自治体の中でデジタル化のパイオニアになるための取り組みを着々と進めているということです。LLMの出現や最近のAIブームに伴い、このトレンドは加速することになるでしょう。

世の中の流行りを把握しつつ、台東県政府は自らの「スローエコノミー」のモットーを忠実に歩んでいきます。TTPushのようなスーパーアプリは、命を救うことからコストの削減、政府と県民のコミュニケーションを改善したりすることができることを目の当たりにしてきました。デジタルツインについては計画や測量に役立つだけでなく防災にも役立ち、さらに VR の普及に伴い、e-ツーリズムにも利用できます。台東県政府は住民の生活を改善し、この町をより緑豊かで繁栄し、アクセスしやすい場所にすることを目的として新しい解決策を探求し続けます。饒知事の指導のもと、県政府はカメのように一歩一歩と確実なペースでデジタル化を進めていきますので、今後の活躍にもご期待ください。

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